「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

働き方改革を考える 書籍紹介「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」

 突然の衆議院解散劇によって、臨時国会に提案予定だった労働関連法案は宙に浮いてしまった……。同法案の審議開始は、早くても年明けではないかと言われています。法案には「残業時間の上限規制」と「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」など重要な変更案が含まれています。前者は、政府の働き方改革実現会議での議論を踏まえ政労使が合意したもので、それまで青天井だった日本の労働間に制約を設けるものです。後者は、一定の年収を超える特定の労働者に対して、労働時間に応じた給与や残業代を支給しない労働制度です。推進したい経営者団体と労働団体で意見が分かれていて、今回の国会審議の大きな争点になるはずでした。はてさて、この審議・法制化はどうなっていくのでしょう。とは言っても、政府が進めようとしている働き方改革の基本的な方向が変わってしまうということではないようです。進め方は工程表の変更は出てくるでしょう。

  ここで、改めて「働き方改革」とは何かを考えてみましょう。言葉だけが先行し、間違った改革が進んでいるのではないか?改革が進み始めたけれど、現場の人には不満がたまってきている! そうした状況に警鐘を鳴らし、正しい働き方改革を進めていこうと呼びかけているのが、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!」(白川桃子/PHP新書です。著者は、相模女子大客員教授・ジャーナリストで政府の改革実現会議の委員として議論に参加しています。残業時間の上限設定を決めた経過について、舞台裏のやりとりも紹介されていて、なかなか興味深いです。

 

 政府の「働き方改革実現会議」は今年3月に報告書を発表し、たくさんのテーマで改革が進めようとしています。もっとも大きなテーマになっているのは、同一賃金同一労働の原則に基づく格差の是正、長時間労働・過重労働をなくすこと、男女共同参画・多様性を認める経営(ダイバーシティ経営)の確立です。この改革の実現には、これまでの考え方・価値観の大転換が必要です。働く人の意識改革も必要ですが、それ以上に経営者の改革が求められています。私は、「働き方改革は経営改革である」と思います。

 ところが企業で始まった改革には「早く帰れ!電気消すぞ!」と表面的な”改革”だけを進めようとしているところもあると著者は指摘します。そのことによって仕事の持ち帰りやサービス残業が増えるなど、現場に不満が溜まっていく事態になっていませんか、と問います。働き方改革は、企業にとっては「会社の魅力化プロジェクト」であり、企業の課題(労働力不足、生産性向上など)と社会的な課題(少子化、女性活躍など)が共に解決していく道だと解いています。そういう意味では、企業だけでなく社会を変えていく大運動、ということが言えますね。

 本書では、働き方改革を成功させるためにどうしたらよいのか、という視点で、次のような諸点を提起しています。長時間労働対策で実績をあげた企業の事例紹介もあり、わかりやすく参考になる情報もたくさん載っています。「働き方改革のポイント・全体像を掴みたい」という方、ぜひご一読を。

<本書の構成>

序、働き方改革の何が問題なのか

  経営戦略としての働き方改革、「時間」という資源が起こすイノベーション

1、働き方改革はどうすれば成功するのか

  三つのショック、働き方改革を担うのは誰か、生産について、長時間労働是正

2、先端事例に「働き方改革」の実際を学ぶ

  大和証券アクセンチュアサイボウズリクルートカルビー、かんぽ生命

  ダイバーシティ西日本勉強会、中小企業でも

3、現場から働き方をこう変える!

  テレワーク、未来の働き方トライアル、見え化の効果、イクボス宣言、残業上限

4、なぜ「実力主義」の職場はこれから破綻するのか

  霞が関の官僚たちが改革に立ち上がった、大手マスコミは変えられるか?

5、「女性に優しい働き方」は失敗する運命にある

  資生堂ショックとは何だった、働き方改革で家庭はこう変わる、女性リーダー育成

6、社会課題としての長時間労働

  父親の育児参加で国の競争力が上がる、改革は地方消滅への特効薬

7、実録・残業上限の衝撃

  「働き方改革実現会議」で目にした上限規制までの道のり

                                  以上

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