組織における心理的安全性 ④「心理的安全性の4つの因子」
前回まで心理的安全性とはどういうものか、チームにとってどういう効果があるのかといったことを解説してきました。今回からは、職場に心理的安全性を作っていく、高めていくための方法について考えていきます。
心理的安全性を感じることができる因子
〜話・助・挑・新〜
心理的安全性の研究者であるエイミー・エドモンドソンは、心理的安全性を測る7つの指標を定義しています。ただ、日本の組織の実情に合っていない内容も多いことから日本の研究者は「日本版」を提唱しています。
「心理的安全性のつくりかた」の著者である石井遼介氏は、慶應大学で幸福学を研究している前野隆司教授らと共同して日本版の尺度を開発しました。そこから、日本の組織において心理的安全性を感じる組織の因子として、次の4つを提唱しています。
【話しやすさ】
〜心理的安全性の土台となる因子。多様な視点からの意見が自由率直に言える。仕事に関する質問が遠慮なくできる。皆と異なる意見をもっていても、黙ってしまわず発言できる。
ひと言でいうと <何を言っても大丈夫>
【助け合い】
〜問題が起こった時に、人を責めずに問題解決に力を合わせる。リーダーやメンバーは、いつでも相談に乗ってくれる。
ひと言でいうと <困った時はお互いさま>
【挑戦】
〜このチームで何かに挑戦することが、自分にとって損ではなく得だと思える。面白いと思うアイデアをメンバーに提案してみようと思える。
ひと言でいうと <とりあえずやってみよう>
【新奇歓迎】
〜人の多様性を重視する因子。自身の強みや特性を発揮することを歓迎されている。常識にとらわれない様々なものの見方考え方が受け入れられている。このチームでは目立っても良いと思える。
ひと言でいうと <異能歓迎!>
4つの因子、
みなさんの職場では
いかがですか?
心理的安全な組織を作っていくために
職場の中に心理的安全性の4つの因子を作り、育てていくためには、企業、チームリーダー(マネージャー)、メンバー(従業員)それぞれが意識を変え、取り組んでいくことが必要です。
以下は、その例です。
(1)企業レベルでの取り組み
・心理的安全性の重要性を理解し、従業員に対する関わり方を示す。
・ガイドラインなどを策定・公開することで従業員が安心して働ける環境を整える。
・従業員の意見を積極的に収集し、改善することで従業員が意見を言いやすくする。
・コミュニケーション改善やチームビルディングのプログラムや研修を提供することで、従業員同士の信頼関係を深める。
(2)リーダーレベルでの取り組み
・メンバーの意見に対してオープンであり、受け止める姿勢を示し、信頼関係を築く。
・メンバーのプライバシーや個人情報を尊重することで、自己開示できる環境を整える。
・メンバーの仕事を認め適正に評価する。
・メンバーの成長を支援するために、継続的なコーチングやフィードバックを提供する。
(3)一人ひとりのメンバーレベルでの取り組み
・自分自身の強みや弱みを認識し、職場内で自己開示することで信頼関係を築く。
・他のメンバーの考え方や意見に対して、オープンで前向きな姿勢を示す。
・自己管理スキルを向上させ、ストレスや不安を適切に管理する。
・リーダーやメンバーのフィードバックに対して、前向きな姿勢で受け止め、改善するための努力をすることで自己成長をめざす。
※次回は、「行動と言葉で作る心理的安全性」について解説していきます。