組織における心理的安全性② ー組織に与える影響ー
航空機関士「パンナム機はまだ滑走路にいるんじゃないでしょうか?」
機長「いや、出たさ。行くぞ。」
航空機関士・副操縦士「・・・・・」
ボーイング747のコックピットでの会話です。
口にされなかった 「・・・・・」 に大きなリスクがありました。
史上最悪の航空機事故「テネリフェの惨事」
1977年3月カナリア諸島の小さな空港で2機のボーイング747(ジャンボジェット)が衝突・炎上し583名が死亡する大事故が発生しました。KLMオランダ航空のベテラン機長で「ミスターKLM」の異名をとるファン・ザンテンが、濃霧の中着陸したパンアメリカン航空機が滑走路から出ていないにも関わらず離陸を強行し衝突したのでした。その間、副操縦士や航空機関士は管制塔との交信状況から「滑走路にまだいるのではないか」との危惧を伝えました。しかし、パイロット免許の交付権限さえあるザンテン機長の「出ただろう」との回答に、それ以上異議を唱えられなかったのです。
人は、このような権威権限のある上司やリーダーの前で、重要な意見を述べるべき状況になったときにどのような行動をとるでしょうか。心理的安全性がない組織では、発言することが自分にとってプラスになるか、それとも損失になるのかを天秤にかけてしまいます。その結果、発言しないという選択をすることがあります。テネリフェの惨事と呼ばれたこの事故の際にも、副操縦士たちは「管制塔の指示を待つべきです!」と発言できなかったのです。心理的安全性の高い組織であれば、どれだけベテランの機長であったとしても若い部下の提案に耳を傾け、冷静に判断をしたのではないでしょうか。
航空業界では当時頻発していたこうした人為的な事故を教訓にクルー・リソース・マネジメント(CRM)訓練を開発し、コックピットやクルー、管制塔を1つのチームとして、持っているリソースを効果的に活用する訓練を実施しています。その中で重視されているは、メンバーのコミュニケーションであり心理的安全性の確保なのです。
心理的非安全な組織の経営リスク
心理的安全性のない組織では、意見が自由に言えず、失敗を許さない空気があり、小さなミスが重なって大きな経営リスクとなることがあります。起こりうる問題点として、次のようなことが挙げられます。
①重大な事故の発生〜不具合を指摘できない。
②不祥事、コンプライアンス違反〜きちんと声を上げられていたらもっと早く対処できた・・・
③組織(部署)間の溝〜情報を共有し連携するどころか対立することも。
④頻発する組織トラブル〜事故・事件の情報・教訓が生かされない、いつも他人事。
⑤新しいことにチャレンジができない〜新基軸提案も潰される、忖度する。
⑥重要プロジェクトの失敗〜知恵が集まらない、間違っても修正されない
⑦ハラスメントの起きやすい組織風土に。
⑧これらの結果、離職率の高い職場になる。
心理的安全性の高いチームでは
心理的安全性が高いチームでは、誰もがたとえ不都合な真実であっても仕事を進める上で必要な情報を共有し、それぞれのメンバーの視点で意見を出し合い、また疑問を確認できます。そして次のような効果が生まれると、産業医・経営コンサルタントの上村紀夫氏は指摘しています。
①チームと個人のつながりを深める(離職対策)
②精神的ストレスの軽減、個人・組織の成長を高める(メンタルヘルス対策、組織力UP)
③「働きやすさの積み上げ施策」→働きがいUPが期待できる(健全な定着へ)
④但し万能薬ではないので、組織活性化が第一。
※次回は、心理的安全性とチーム活性化について