組織における心理的安全性について① ー心理的安全性とはー
今、ビジネスの世界では「心理的安全性」(Psychological Safety)という言葉が注目されています。心理的安全性が確保されている組織は生産性が高い、という研究結果も発表されていて、心理学的な視点だけでなく経営組織論的にも研究がすすめられています。これは、私たち働く者にとってとても身近なテーマでもあります。この連載では、この心理的安全性とはなにか、その作り方は?といったことを3回に分けてご紹介していきます。
心理的安全性とは?
「心理的安全性」という考えは、ハーバード大学・エイミー・エドモンドソン教授により提唱された概念です。
「チームの中では対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、とメンバーに共有されている信念」と定義されていますが、ちょっと硬いですね。
「職場や学校、コミュニティの中で、その地位や経験に関係なく、誰もが率直な意見や素朴な質問を言うことができる状態」
という表現だとわかりやすいでしょうか。
みなさんには、こんな経験はないですか?
〜何か質問したいことがあっても、「そんなこともわからないのか!」と言われてしまいそうで、言わないでおいた。あるいは、意見や提案をする際には、上司やリーダーのご機嫌を伺ってしまう。こういう組織は、心理的安全性が低い組織といえます。逆に、「このメンバーだったら、どんなことでも意見が言え、質問や相談ができる」という関係性もあるのではないでしょうか。こういう組織は心理的安全性が高いといえます。
なぜ注目されているの?
エドモンドソン教授の研究チームは、元々は医療現場の組織について調査・研究していました。たくさんのチームを調べたところ、成績の良いチームほどミスが多いことがわかったのです。
「???」ですよね! 更に分析してみてわかったことは、「ミスの報告数が多い」という点でした。つまり、大小のミスを随時報告・共有し、対策を打っているチームがより良い医療成果をあげていたのです。チームが「叱責されるのが怖くてミスの報告ができない」状態だと、良い成果はあげられない。このことから、心理的安全性がチームの成果に与える影響が大きいとレポートしたのです。
その後、Googleのプロジェクト・アリストテレスが社内にたくさんあるチームの状況と生産性の関係について調べ、次のようなレポートをまとめました。
「重要なのはチームのメンバー構成よりも、チームの協力体制がどのようなものかということで、その協力の方法の中で圧倒的に重要なのが心理的安全性である。また、心理的安全性が高いチームは離職率が低く、収益性が高い」
こうしたビジネス界での研究や実践から、注目されるようになりました。
心理的「非」安全性の対人関係リスク
心理的安全性がない組織では、人は「〜と思われたくない」と考え、対人リスクを避ける行動に出ます。たとえば次のようなことが起きてしまいます。
無知と思われたくない → 必要なことでも質問せず、相談しない。
無能と思われたくない → ミスを隠す。自分の考えを言わない。
邪魔だと思われたくない → 必要でも助けを求めず、不十分な仕事でも妥協する。
こうした行動は、個人の問題だけでなく、その組織にも少なからぬ影響を与えてしまいます。たとえば、小さなミスが大きなミスに拡大してしまい、大きな損失につながってしまうこともあります。
※次回は、企業に与える影響などを解説します。