「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

働き方改革 政府、「残業税」の導入を決める?!

サービス残業は脱税になります」

 労働基準法では、一日8時間または1週間40時間を法定労働時間と定めており、これを超える労働については割増賃金を払わなければならない。この割増された賃金の2割が、時間外労働勢として、労使折半で国に納められる。

 

えっ! 割増賃金から税金を払うの? 会社だけでなく労働者も!

 ご安心ください。小説「残業税」(小前亮著、光文社文庫)の一節です。作品では、残業税を払わないために様々な違法な残業隠しや虚偽申告をする企業に対して、実態を暴き税の徴収をするため国税庁に「時間外労働税調査官」、通称「マルザ」が設置される。マルザは、各地の労働基準監督官と組んで、悪質企業の巧妙な残業隠しを暴いていく。多くはブラック企業であるが、税金を払う余裕のない零細な企業の場合もあり、関係者からは反発を受けることもある。様々な妨害や挫折を乗り越え、法の正義のために今日も戦っていく・・・。そんなお話です。

 

 この物語の中で「残業税が導入されて世の中のあり方が大きく変わった」とされています。こうした税金制度でも入れないと、企業は本気にならないのではないか、というメッセージなのかもしれません。

 

 現実の日本では、働き方改革の具体案として「時間外労働の上限規制」や「年次有給休暇の取得義務付け」などの規制と、労働時間に拘束されない働き方として「高度プロフェッショナル制度」を認める労働基準法の改正案が準備されていました。本来は9月下旬に召集された臨時国会で審議されるはずでしたが、ご存知のように解散総選挙があったため廃案となりました。

 選挙の結果、解散前とほぼ同じ与党体制となったので、改めて同様の法案が審議されることになります。国会は年内は実質審議をしない、という観測もありますので、年明けからの審議スタートとなります。この法改正は当初2019年4月施行を予定していましたが、ずれ込む可能性もあります。こうした労働政策においては、日本は先進国の中でも特に遅れていますが、さらに遅れていきそうです。法改正をまたず、民間での実のある働き方改革が求められている、とも言えそうです。

 

 他の国の政策はどうか? ドイツの取り組みを紹介している記事がありました。
ドイツでは、「1日10時間以上働いてはいけない」という法律があり、違反すると企業は罰金を課せられる、しかもそのほとんどは「働かせた上司」が負担しているということです。これではたまりませんから、上司(管理職)はこまめに部下の労働時間を把握して、残業しないように指導したり役割分担を調整したりするということです。おそらくこの段階に来るためには相当の年数がかかったものと思いますが、行政、企業、管理職、そして労働者が同じ目標を掲げて取り組んだから実現できたものと思います。

ちなみにドイツの労働生産性は、日本を約50%も上回っており、好景気が続いています。

 

 日本もこうした事例を参考にしながら法制度の整備を進めてほしいものです。また、長時間労働の解消と生産性の向上を両立させるための企業と従業員の努力・工夫、仕組みづくりも不可欠です。現状を分析し、課題を明確にし改革の方向性と対策を打ち立てて取り組んで行くことが企業とその現場に求められています。

 

 

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