「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

これって、パワハラ? -Part 3-

パワハラを受ける人のイラスト(男性)

 Part1、Part2でパワーハラスメント(以下、パワハラと言います)の要件やパワハラにならない業務上の指導について解説してきました。今回は、どのような行為がパワハラになるのか、具体的に見ていきます。

 

 パワハラ6つの行為類型

 具体的な行為として、次の6つの類型(パターン)があるとされています。

      (厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」平成30年3月)

  1. 暴行・傷害(身体的な攻撃
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃
  3. 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求
  5. 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求
  6. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害

 

一つずつ見ていきましょう。

 

身体的な攻撃

 暴行・傷害は、立派な犯罪です。(刑法208条、204条)

職場内で、こうした身体的な攻撃は絶対に起こしてはいけません。

 ただし、業務上の指導中に激昂して暴れ出した従業員を制止するために腕を掴んだなどの場合には、違法とならないケースもあります。

 

精神的な攻撃

 脅迫はもちろんですが、名誉毀損・侮辱も犯罪となる場合があります。(刑法)

 言葉による暴力・精神的な攻撃は、職場内で起こりやすく、ハラスメントだと認識されずに横行している場合もあります。どのような言動がパワハラ・違法行為となるのか、過去の裁判事例からみてみましょう。

<違法となる例>

  • 部下を叱責する際に、「バカやろう」「給料泥棒」などと言う。また、配偶者や親を引き合いに出して「こんなに仕事ができないのは親のせいだ」「よくこんなやつと結婚したな」などと言う。
  • 作業の指示に従わなかった派遣社員に対して、「殺すぞ」と発言した。
  • 部下を叱責する際に「そんなことくらいアホでも小学生でもわかるやろ」などと言う。
  • 職場に「この者とは一緒に勤務したくありません!/○○課一同」と書かれた被害者の顔写真付きポスターを掲示した。

<違法とならない例>

  • 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた従業員に対し、再三注意しても改善されないため、強く注意した。
  • 上司が部下に対して強く叱責したが、その部下が反発するばかりで自らの行いや態度を改めようとしなかった一連の経緯から、違法とまでは言えない。

 ※部下の指導では、部下の態度・対応によっては繰り返し指導する必要があり、その状況により判断が分かれます。

 

 

人間関係からの切り離し

 人間は一人では生きていけない社会的な動物です。自ら望まない限り、「村八分」など他の人たちから切り離されるのは辛いですよね。それが1日のうち多くの時間を過ごす職場で行われたとすると、精神的苦痛を感じるのではないでしょうか?

 職場における人間関係の切り離しの例としては以下のようなことが挙げられます。

  • あいさつをしても無視され、会話もしてくれなくなった
  • 私の仕事を手伝わないと、他の社員と申し合わせがされた
  • 忘年会の案内が、私にだけこない。社員旅行参加を拒否された。
  • 社内の回覧物を回してくれない、情報共有されない
  • 転勤を断ったところ、仕事を与えず、「隔離部屋」に移された

 この人間関係の切り離しは、上司から部下という関係だけでなく、社内いじめなど同僚間でも起こり得るので、注意が必要です。また、社会的に問題となった大手メーカーなどの「追い出し部屋」など、組織的に行われる場合もあります。

 

 

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過大な要求

 ある時、とても一人では処理できないような業務をいきなり任されたら、途方にくれてしまいますよね。それでも業務命令なら取り組まないわけにはいかない。しかし、どうも“私だけ”に命令されているようだ… 。それは、パワハラと言えるかもしれません。

  • 終業間近に大量の書類を渡され、「明朝の会議に間に合うよう報告書を作成しろ」と業務命令を出され、深夜まで残業して処理に当たった
  • 休日出勤しても処理できないような大量の業務を命じられた
  • 不必要と思える細かいデータ分析資料を作るよう指示され、長時間作業を強いられた
  • とても一人ではできないような企画・提案づくりを強要され、土日返上で数週間働き続けた
  • 合理的な理由もないのに、提案書を何度も書き直させられ、最終的には廃棄された

 

 業務量が増え長時間労働を強いられると、ハラスメントというだけでなく、メンタル不調の原因ともなります。本来、業務量の調整と人員体制確保は企業側の責任で行うべきものです。やむを得ず集中して業務処理を行わざるを得なかったとしても、従業員の健康に十分配慮した上で、より適正に業務を配分して行う必要があります。メンタル不調などを起こした場合、企業に対して「安全配慮義務」違反を問われる場合もあります。企業としては、こうした現場の状況を把握しておくことも重要です。

 

過小な要求

 働く人にとって仕事のやりがい・充実感を感じるのは、自身の特性と能力を活かした仕事ができ、成果をあげることができた時ではないでしょうか。経験や能力を活かすことができない、軽微な仕事しか与えない、仕事を奪う行為は、その人の誇りを傷つけ、人格権を否定するものです。

  • 看護師としての仕事を与えず、事務仕事を時折与えるだけだった
  • 本人に問題がないのに営業から倉庫へ配置転換し、降格させ賃金を2分の1とした
  • 退職勧奨に応じなかった技術開発部長を現場の作業員に配転した

 

個の侵害

 職場では、個人的な交流やある程度家庭の事情を知ってもらうことも必要になってきます。お互いの信頼関係を超えて、必要以上にプライバシーに踏み込まれたり、侵害されたりする行為はパワハラとなります。

  • 年休を取ろうとしたら、上司から取得の目的をこと細かく質問され、認めてもらえなかった
  • 同僚から、休日の予定を執拗に訊かれ、ロッカーやバッグの中を覗かれた
  • 異性との交際について、上司から「あいつは危険人物だ」と誹謗中傷された

 

勉強会のイラスト

 こうした行為の中には、本人がパワハラだと認識せず行っているものもあります。業務上の指導や職場内の人間関係がうまくいくためには、自身の言動が「相手にはどう受け止められているか」と振り返ってみることも必要です。

また、企業としてはハラスメントに関する啓発を繰り返し行っていくことが求められます。

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 #これって、パワハラ?  #パワハラ防止  #ハラスメントのない職場  #パワハラ6類型

これって、パワハラ?  -Part 2-

 

 

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「こらっ! 何やってんだ、バカ! ここからすぐ出ろ!」

「えっ!? あ、すみません」

 

 製造係の鈴木主任に用があって工場にやってきた総務課の田中さんに対して、工場長の佐藤さんは、顔を真っ赤にして怒鳴りました。びっくりした田中さんは、慌てて工場から出て行きました。

 

さて、これはパワハラでしょうか?

「こら!」とか、「バカ」とか言っちゃっていますし、かなりの剣幕で怒鳴ったみたいなので、パワハラなのでしょうね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えは、ノー。パワハラではありません。

 事情を詳しく見てみましょう。

 この会社は、機械部品を製造する、従業員100名ほどの小規模企業です。会社の本部機能(営業や管理部門)と工場が一つの事業所にある大きめの町工場といった感じでしょうか。

 しかし、技術力で勝負するこの会社が手がける製品は、スマートホンなどに使われる小さくて精密なものが多く、工場内の整理整頓、クリーンな環境維持が必須です。そのため、工場内での服装や入場の手順を厳しく定めています。また、製造ラインの一部にはロボットも導入されていて、不用意に近づくとアームと接触する危険もあります

 会社に入ってまだ日が浅い田中さんは、そんな厳格なルールを知らずに、鈴木主任にタイムカードの集計のことを訊ねるために、不用意に工場内に入ってしまったのです

それを目撃した佐藤工場長は、製品の保全と安全管理のため、急いで退出するよう注意したのです。もちろん、落ち着いて丁寧に説明した方がベストですが、製品の品質や安全に関わることなので、思わず怒鳴ってしまった、というわけです。

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工場に入るには決められた服装で!

 

パワハラ要件「業務上の必要な範囲を超える」とは

守るべきルールや安全確保のため指導が必要

 このようなケースは、パワハラの要件である「業務上必要かつ相当な範囲を越え」たとは言えず、業務上の指示・指導の範囲であると言えます。例えば、遅刻が何回か続いている社員が遅れて職場に入ってきた時に、他の社員の前で注意し、反省を促すといったこともパワハラとはならないでしょう。

※もちろん、同じシチュエーションでも暴力を伴なうものは許されず、パワハラとなります。

 

人格否定はパワハラ

 逆に、指導に当たって「お前は係長だろ。係長らしい仕事をしろよ」「お前は覚えが悪いな」「バカかお前は! 係長失格だ」と言うように、その人の地位そのものや能力・人間性を否定するような言葉・態度で臨むのは、パワハラといえます。

 

 海上自衛官パワハラ事件に関する判例では、違法(パワハラを認定)の理由として、次のような点を挙げています。

①緊急を要しない場面で繰り返し厳しい発言をした

②個々の行為や技能について指摘するにとどまらず地位や人格に言及した

③指導の後に心情を和らげるような措置もとっていない

福岡高裁平成20年8月25日判決)

 

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感情に任せて怒らない

 

 

罪を憎んで人を憎まず

 「罪」を部下のミス・行為と置き換えてみてください。仕事に関わる失敗や技能の程度について、個々に指摘・指導することは、パワハラにはなりません。注意の対象が、「人」〜その人そのもの、人格〜ではなく、「行為」であれば、適切な指導の範囲となります。行為を改めることはできますが、人格・性格や持って生まれたものは直す事ができないことですし、そのような資質は仕事上指導されるものではありません。

 部下の立場から見たら、感情的に怒鳴り続けられ、人格を否定されるような指導を受けたら、モチベーションは上がりませんし、上司への憎しみこそ増すものの信頼度は落ちることは容易に想像できます。

 

業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動とは

 前回のブログでも紹介しましたが、「業務上の必要」について、厚生労働省の「平成30年度・職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」では、「社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性のない又はその態様が相当でないものであること」としています。この要素に当てはまる主な例として、次のような行為が考えられるとしています。

  • 業務上明らかに必要性のない行為
  • 業務の目的を大きく逸脱した行為
  • 業務を遂行するための手段として不適当な行為
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為

   リーダーには、上記の要件に当てはまらないような指導に対する考え方や行為が求められます。

 

業務上の指導は適切に実施すべし

 「こんなことをしたら、こんなことを言ったら、パワハラと訴えられるのか?」と部下への指導を躊躇してしまう管理職も少なくないのではないでしょうか。しかし、実際の仕事では、事業目的・目標を達成するために、部下を指導しリードしていかないと動かないことはいくらでもあります。その時に、指導を放棄してしまったら、事業はストップしてしまい、業績悪化や人が育たない職場になってしまいます。

要は、タイミング良く、適切な指導をすることがリーダーには求められています。

 

では、どんなことに留意をしていけばよいのでしょうか。

 

業務上指導の留意点

 あらためて、業務上指導をする上での留意点をまとめてみました。

1、行動を起こす前に「ひと呼吸」

 ①感情的に注意・指導をしない

  ・感情のままの言動や、人格否定など不要な事を言ってしまう

  ・注意を受ける方も、感情をぶつけられると素直に受け止められない

  ・怒りやすい人は、アンガーマネジメントで自分をコントロールする

 ②注意指導すべき問題点は何か、事実を確認し分析する

  ・注意指導の目的とゴールイメージを持って臨む

  ・具体的な問題点や指導すべき行為を明確にしておく

2、対等な話し合いの場をつくる

 ①指導の基本は1対1、別室で行う

 ②一方的に「あなたが悪い」と決めつけない

  ・事実を確認する

  ・相手の言い分を聴き、受け止めた上で問題点を指摘する

 ③厳しい叱責・指導の後には精神的なフォローをする

  ・指導の後には、暖かい笑顔で激励も

  ・実際にフォローアップの手をうつ

 ④日頃からコミュニケーションをとることが大切

3、言葉を尽くして伝える

 ①「罪を憎んで、人を憎まず」のスタンスで。(人格攻撃は厳禁)

 ②暴力は論外 →即、犯罪です!

4、対応の難しい部下の問題を一人で抱え込まない

 ①長時間・複数回にわたり、同じ事を繰り返し指導するということは避ける

 ②何度指導しても改善が見られない場合は、1対1でなく、第三者(上司など)にも関わってもらって対応していく

5、相手の事を思う

 ①相手を自分の家族など大切な人に置きかえて考えてみる

 ②部下の成長を長い目で見る、自身の関わり方を再度考えてみる

 

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ハラスメントのない元気な職場を!

 あなたは、現在、部下への指導をどのように行なっていますか?

ハラスメントのない適切な指導は、部下のモチベーションをアップさせ、能力を引き出し、結果として職場の目標達成につながります。

 上記を参考にしていただければ幸いです。

 

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 #これって、パワハラ? #パワハラ防止 #ハラスメントのない職場づくり #部下指導のあり方 #ハラスメントをなくそう


これって、パワハラ?   Part 1

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 前回のブログでパワーハラスメントパワハラ)について法制化され、事業主に防止や相談体制整備が義務化されたことをお伝えしました。では、パワハラって、どういう行為を言うのでしょうか? 今回は、その定義について解説します。

 

パワハラの定義

 今年5月に成立した、改正労働政策総合推進法でパワハラの定義を下記のように定めました。

 ①優越的な関係に基づく

 ②業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動により

 ③労働者の就業環境を害すること

 

 それぞれの内容を見てみましょう。

 

優越的な関係

 <上司→部下>

  • 職場における優越的な関係といえば、部下に対する上司が典型的な優越的関係と言えます。特に、人事権を持っている上司は、部下にとっては絶大な力をもった存在と言えます。また、直属の上司でなくても、会社の重要なポストにいる者と社員との関係も優越的関係になります。

 <先輩→部下>

  • 社内では、同じような立場にいたとしても、入社したばかりの社員にとって、ベテラン社員は仕事の能力や人脈など実力差を感じる存在で、優越的な関係と言えます。その先輩としての力を背景にした嫌がらせなどもパワーハラスメントとなります。
  • これは、正社員だけでなく、パート社員同士の関係などでも起こりえます。

<正社員→非正規社員

  • 雇用形態によるパワーの差は、職場では歴然としたものがありますね。任されている職務の違いやそれに伴う権限の違いも大きいでしょう。たとえ新入社員であっても、非正規社員派遣社員にたいして業務上の指示・命令をする、ということもあります。明らかに優越的関係といえるでしょう。

<同僚→同僚>

  • 職場における役割は変わらず、社歴もそれほど違わない同僚同士であったとしても、グループを作り職場内いじめを行う、といったケースが考えられます。職場という組織にあって、実質的なパワーを誰がもっているのか、という点が優越的関係を左右します。

<部下→上司>

  • 例えば新任の店長さんが赴任してきて、そのお店の改革を進めようと試みた時に、担当者が新任の上司が気に入らないとして、集団として抵抗または拒絶するといったケース考えられます。このように部下である担当者が、業務上必要な知識や豊富な経験を有している場合も優越的な関係にあたります。

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業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動

 業務上の必要について、厚生労働省の「平成30年度・職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(以下、「検討会報告書」)では、「社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性のない又はその態様が相当でないものであること」としています。この要素に当てはまる主な例として、次のような行為が考えられるとしています。

  • 業務上明らかに必要性のない行為
  • 業務の目的を大きく逸脱した行為
  • 業務を遂行するための手段として不適当な行為
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為

 「業務上の必要」については、職務の内容、業務の危険度、対象となる労働者の熟練度など職場のシチュエーションによって異なってきますので、その都度判断していく必要があります。

 また、個人の受け取り方よっては指示・命令等に不満を感じることがあったとしても、それらが業務上適正な範囲で行われている場合にはパワハラには該当しません。

 

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業務上必要な指導はOK

 

労働者の就業環境を害すること〜どんな行為がパワハラになる?

 パワハラは、行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、または行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者の就業上看過できない支障が生じる行為を言います。(検討会報告書より)

 また、判断に当たっては「平均的な労働者の感じ方」を基準にするとしています。この点は、行為を受けた労働者の主観を基準とするセクシュアルハラスメントとは異なります。

 ただし、今回の法改正に当たっての参議院付帯決議(第9項1)では、「パワーハラスメントの判断に際しては、『平均的な労働者の感じ方』を基準としつつ、『労働者の主観』にも配慮すること」としています。今後厚生労働省が作成する「ガイドライン」にどのように反映されるのか、注目されます。業務上適切な範囲で行なった指導に対して、「俺は不満だ」とパワハラを主張するという者が増えるのではないかと懸念されます。

 

パワハラのパターン(行為類型)

 では、具体的にはどのような行為がパワハラに当たるのか、検討会報告書では下記のように6つの行為類型を整理しています。(詳細は、次回に解説します)

  1. 暴行・傷害〜身体的な攻撃 
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言〜精神的な攻撃
  3. 隔離・仲間外し・無視〜人間関係からの切り離し
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害〜過大な要求
  5. 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと〜過少な要求
  6. 私的なことに過度に立ち入ること〜個の侵害

 

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風通しのよい職場を!

 パワハラを未然に防ぐことが大事

 職場の中で発生した行為がパワハラに該当するのかどうかは、3つの側面から個々の状況を具体的に検討して判断していくことが求められます。企業経営者や職場を預かるマネージャーは、基本的な知識としてもって、対策を講じてパワハラを未然に防ぐことが求められます。

次回、6つの行為類型について、判例などを紹介しながら解説していきます。

 

<参考>

厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000201255.html

 

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職場におけるパワーハラスメント その傾向と対策

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労働相談 トップはパワハラ 過去最高の8万3千件

 厚生労働省は6月26日、2018年度の総合労働相談の結果を公表しました。それによると2018年度の総合労働相談のうち個別労働紛争にかかわるものが266,535件、このうちパワハラなど「いじめいやがらせに関する相談」が82,797件とトップでした。(構成比31.0%) 昨年より14.9%増加し、過去最高の件数となりました。

いったい何が職場で起こっているのでしょうか?!

 ハラスメントに対する認識が広まり相談しやすくなった、ということも言えますが、人手不足が深刻化する中で労働現場でのコミュニケーション不足やストレスも大きくなっているのかもしれません。

 こうした社会的な変化の中、ハラスメントをなくし労働環境を整えていくことが企業に求められています。事業主のパワーハラスメント防止措置の義務化する法改正がありました。

 

報道

www.asahi.com

厚労省の発表 ↓

 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000213219_00001.html 

 

パワーハラスメント防止、事業主に義務化

 事業主に職場のパワーハラスメント防止対策を義務化した改正労働政策総合推進法等の法案が、5月に成立しました。職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラと言います)は社会問題化していますが、これまで法律上明確な定めがありませんでしたが、明文化されたことになります。今回の法改正で、パワハラ紛争を都道府県労働局長による解決援助と紛争調整委員会による調停対象とすることも決まりました。

 

報道

www.asahi.com

パワハラって? 

 パワハラの定義として、①優越的な関係に基づく、②業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動により、③労働者の就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)――の3要件を含むものとしました。

 ここで言う「優越的な関係」とは、

必ずしも<上司→部下>でないことが重要なポイントで、

<先輩→後輩>や<部下→上司>と言う場合もあります。

職場で、実質的にパワーを持っている人が、そのパワーを不適切に使用した場合ということが言えます。

 また、「業務上必要かつ相当」というのが、だれもが業務上必要な指導の範囲だ、と認めうるのか、それを逸脱したものなのかと言う点も、パワハラか否かの争点となります。業務上指導のあり方の基準を作り、管理職への教育、意識改革をするめていくことも企業に求められる事項と言えます。

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同僚同士のハラスメントもNG

事業主に求められること

 事業主に義務化するパワハラ防止対策の内容は、今後、厚生労働省が作成する「指針」で示すことになります。具体的には、事業主方針の明確化、相談体制の整備、紛争の事後対応、プライバシー保護などが中心となると思われます。

また、昨今問題となっている、カスタマーハラスメントや就活生に対するセクシュアルハラスメントも対象とすると言われています。参議院の附帯決議でも「従業員等に対する悪質クレーム等により就業環境が害される事案が多く発生していることに鑑み、…その防止に向けた必要な措置を講ずる」と政府に対応を求めています。

 

セクハラ防止対策も強化

 一方、セクハラ防止対策の強化(男女雇用機会均等法改正など)では、①国、事業主および労働者の責務の明確化、②労働者が事業主にセクハラ相談をしたことなどを理由とする事業主による不利益取扱い禁止――を追加して規定しました。

 同じく近年、社会問題化している就活生に対するセクハラ防止に向けても何らかの対応策を示す予定です。就活生は労働者ではないのですが、「求職者」と位置付ければ防止対象に含めることができるという考えです。

 

ILO、ハラスメント防止の国際条約案を可決

 職場におけるハラスメントは日本だけでなく世界でも問題となっています。国際労働機関(ILO)は、先の総会で職場でのハラスメントや暴力を全面的に禁止する国際条約を可決しました。日本政府のこの条約批准への態度はまだ定まっていませんが、批准すれば国内法制の整備が求められます。いずれにしても「ハラスメントのない職場をつくる」ため、政府や事業主の努力が求められることは国際的な流れとなっていきます。折から、外国人雇用に関する法改正(2019年4月施行)された日本においては、受け入れる外国人も安心して働ける労働環境づくりの一つとして、ハラスメント防止対策の推進が求められます。

 報道

www3.nhk.or.jp

 

経営理念としてもハラスメント対策に本腰を!

 このように、企業のハラスメント対策は、企業としての基本方針を定め、体制を整えて、管理職をはじめ全社員の意識改革を進めながら、ことが起こったときに揺るがず原則どおりに対応し、「ハラスメント、NO!」を徹底できるかどうかが重要です。今一度、「わが社の現状」を分析し、経営理念としてハラスメント防止(「=働きやすく従業員のモチベーションの高い企業づくり)を位置づけ、必要な方針・ビジョンと対応策づくりを進めていくことが肝要です。

 

#パワーハラスメント

#パワハラ法制化

#パワハラ防止義務化 

 

人生100年時代の生き方・働き方を考えるには……

 

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定年後はゆったりスローライフ?!



「人生100年時代っていうけど、そんな先の話で考えようがない」

そう思っていませんか?

 

すでに人生100年時代は始まっている

  長寿社会日本、平均寿命は、2017(平成29)年で男81.09歳、女87.26歳となっています。これはその年に0歳だった人が何歳まで生きるかを推計したものですが、同年の主な年代での平均余命(残り何年生きるか)でみると、以下のようになっています。(いずれも厚生労働省ウェブサイトより)

  40歳 男42.05年 女47.90年

  50歳 男32.61年 女38.29年

  60歳 男23.72年 女28.97年

  65歳 男19.57年 女24.38年

 つまり、60歳定年後でも24年〜29年の人生が残っていることになります。

 

厚生労働省のページから>

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-02.pdf

 

 

 現20代の多くは100歳まで生きる?

 現在の20代は、100歳まで生きる人が当たり前のようになっていると言われています。彼らが定年を迎える頃、仮に一般的な定年が70歳となっていたとしても、人生はまだ30年残っていることになります。こうした長寿社会の中で生き方を大きく変えていかなければならないと警鐘をならしたのが、ロンドンビジネススクールリンダ・グラットン教授アンドリュー・スコット教授が書いた「LIFE SHIFT」です。この本は、キャリア研究者、キャリアコンサルタント、人事担当者だかでなく企業経営者にも必読書と言えます。

 

「LIFE SHIFT」が提起していること

キャリアだけでなく、生きていくための資産の確保も必要となります。そのために“定年前後から考え始める”のでは遅いと指摘しています。資産には金銭もありますが、知識や能力や人脈・ネットワークといった目に見えない変化していく資産も重要です。そのために、若いうちから視野を広げ様々な経験と学習をしていくことが重要です。教育という自己投資を積極的に行うこと、エクスプローラー(探検者)として様々な経験を積むこと、そして中年期にさしかかってから自己の再創造(リ・クリエーション)を行い、定年後に新しいキャリアを作っていくことを提案しています。

 

<出版元・東洋経済新報社の関連ページ>

book.toyokeizai.net

 

宮城まり子先生の講演から

先日、日本の人事部主催の「HRカンファレンス2019春」大阪会場に参加しました。そこで、宮城まり子先生(キャリア心理学研究所・代表)の「人生100年時代のライフキャリアデザイン〜これからの生き方・働き方・学び方を考える〜」という講演を拝聴しました。

宮城先生の講演はいつ聴いてもわかりやすく、丁寧に語ってくれます。今回も大変勉強になりました。キャリアコンサルタントとしての仕事上も参考になるお話だったのはもちろんですが、私自身のこれからのキャリアについて大変考えさせられる内容でした。

 

宮城まり子先生のプロフィール〜慶応義塾のWebサイトより>

www.keiomcc.com

 

人生100年時代のライフキャリアデザイン

以下、ポイントをご紹介します。★は、筆者の感想、コメント。

 

人生の節目と気づき

 節目ごとに自己を見つめ直し、いかに気づくかが大事

 心の中を言語化することで、自己への深い気づきと行動変容につながる。

 「50歳は人生の正午」〜折り返し点であり後半の人生を考える

人生100年時代のキャリアデザイン

 長寿化により人生のステージの移行を複数経験する。定年後30〜40年の人生がある。様々な選択肢があり、選択の連続となる。

 「生涯発達の時代」人は生きている限り死ぬその日まで、生涯にわたり絶えず成長・発達し変化する存在である

3分割人生からマルチ人生へ

 これまで 学生(勉強)社会人(仕事)定年後(余暇)

 これから 経験・知識・スキルの陳腐化により何度も学び直しが必要

      環境変化に合わせた、新たなキャリア開発・デザインが求められる

      キャリアサバイバル〜環境変化に適応する

 「組織内キャリア」から「生涯キャリア」への転換が必要。

   生涯にわたり自分をどう生かすか。

   人生の長さではなくどう生きたか(内容と質)が問われる

 ★定年後から30年の人生があるとすれば、その間にもいくつものキャリアチェンジを求められることが起こりそうです。その都度、というか継続して学習し、自分への投資を怠らず(体力づくりなども含まれますね)、環境変化に対応して変化・成長していくことが大切だと思います。

変化する環境への適応 学び直しと生涯“育自”

 環境の変化を確実に捉え、自らキャリアデザインを見直し、変更する勇気も必要。

 変化に対して変幻自在に対応する。

 ★「生涯育自」という言葉がとても印象に残りました。

キャリア形成への6つの問い

 ①自分はどうありたいのか、何をしたいのか。自分をどう活かしたいか

 ②自分は何に興味・関心があるのか

 ③何ができるのか、強み、売り、専門性、付加価値は何か

 ④大切にしたい価値、価値観は何か

 ⑥これらをふまえて、具体的にやるべきこと、行動は?

 ★この問いについては、講演を聴きながら、私自身も考えてみた、これからも節目節目で考え、答えを見つけていかなければならないと感じました。

キャリア形成への3つのアプローチ

 ①現在の担当職務、役割・責任に真摯に取り組む

 ②3・5・10年後先を展望したキャリアの準備・行動、仮説をもつ

 ③仕事以外の学習、活動、趣味を積極的に拡張する

 ★大事なアプローチですね。肝心なのは、できるだけ若い時からアプローチし始めておくことです。定年直前からでは間に合いませんよ!

パラレルキャリアと複数の名刺

 単一のキャリアではなく複数のキャリア、パラレルキャリアへ

  本業の他に社会活動、Pro Bono(本業の知識・スキルを活かした社会貢献)

  職場でも家庭でもない第三の居場所づくり

  複数のキャリアを並行して形成するパラレルキャリア

  現役時代から時間をかけ独自の「ライフワーク、生きがい、居場所」を創る

★最近、パラレルキャリアという言葉をよく耳にするようになりました。単に副業・兼業のことを言うのではなく、本業との関係でも活きるし、ライフワークや居場所を創る意味合いがあることを知りました。なんでもかんでもではなく、じっくり取り組めるテーマを見つけることですね。

 中年期の発達ステージと心理特性

 ①老いの自覚〜身体変化と思秋期

 ②視座の逆転〜終わり(定年など)から逆算して捉える

 ③有限性の自覚〜自分の限界、寂しさ・侘しさ・虚しさを感じる

 ④アイデンティの変化〜名刺は借り物で自分自身ではない、「自分とは何か」

 ⑤変化とストレス〜環境変化と新たなストレス、親子・夫婦・老親との関係

★この指摘はとてもよくわかります。経験者として。 こうした心理特性と環境の変化によって、キャリアに関する葛藤や不安、落ち込むという現象が出てきます。そこを乗り越えていくために、キャリアや生き方について考え、選択・意思決定していく必要があります。

キャリア選択と意思決定

 ①キャリア選択と取捨選択

  ・何を優先させ、何を選択するのか。何を諦め、何を捨てるのか。

 ②選択の条件・価値基準を明確化する

  ・大切にしたい価値、価値観の見直し

  ・譲れない人生の条件は何か

  ・自分にとって「人生の成功・幸福」とは何か? 

  大切なのは「主観的幸福感」

 ★こうした意思決定の場には、キャリアコンサルタントにより支援が有効です。

 

キャリアの転機にあたり、これからの人生・キャリアを考え、目標化して行動に移していくことが大事。

<目標なくして行動は始動しない>

<行動なくして目標は達成されない>

 まずはやってみる、試してみる、行動しながら軌道修正していく。

不確実な明日を前向きにとらえ、たまたまの偶然(Planned Happenstance/Dr.Krunboltz) を意味あるものに変えていく。偶然を掴むための日頃からの準備を怠らないこと。

 キャリア自律の6要因

 ①自分自身への深い気づき

 ②価値観の明確化

 ③継続的な学習(たゆまぬ先行投資)

 ④未来志向

 ⑤ネットワーク形成(幅広い人脈)

 ⑥柔軟性と回復力(レジエンス)

 自分のキャリアを開発し、育て、磨くのは自分自身

 

自分のキャリアは自分で……

  宮城先生は、キャリア自律ということが人生100年時代にとても重要だとおっしゃっていました。自分のキャリアや生き方は、自分自身で考え、意思決定し、行動し、変化させていくしかないんですね。

 職業人生の早い段階からこうした観点を持って、目の前の仕事に取り組み、同時に将来の自分のためになる投資(教育投資、経験投資、資産形成など)を行っていくと、将来の選択肢(可能性)が広がります。

 「もう中年期に入っちゃった!」という方も、自己を振り返り、変化を恐れず取り組めば、まだ間に合います。なぜなら、現役のあなたには30年以上の次のステージが待っているからです。

 

キャリアコンサルタントも活用してください

 私たちキャリアコンサルタントは、働く人や働こうとしている人に寄り添って、ご自身のキャリアを振り返り、新しいキャリアプランを作っていく、あなたご自身の取り組みを支援することを仕事にしています。小さなことでも相談にのりますよ!

働き方改革関連法〜年次有給休暇の取得義務化スタート

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 昨年成立した「働き方改革関連法」中で「年5日間以上の年次有給休暇(以下、「年休」と言います)時季指定義務化は、企業の規模に関係なくこの4月1日(2019年)から施行となります。従業員の年休取得状況の把握、「5日以上取得させる」対策や取得状況管理簿の整備など準備が必要です。罰則規定もありますので、きちん制度を整えておきたいものです。

 

年休時季指定義務化〜労働基準法の改正〜の概要

 労働者の心身リフレッシュを目的に、年休を毎年一定日数以上取得させることが事業者に義務付けられます。背景には、長時間の時間外労働の多い労働者は年休消化率が低いという相関関係がわかってきたこと、先進諸外国に比べて年休消化率が低いことなどがあります。

 2019年4月1日以降に付与された年次有給休暇が10日以上ある従業員に対して、1年間で休暇を5日以上取得させることが事業主に義務づけられます。また、年休の取得状況を記録した管理簿の作成が求められ、3年間の保存が義務付けられます。対象労働者の年休取得が年間5日に満たなかった場合、労働者一人に対して30万円以下の罰金が使用者に課せられます。 

 

 時季指定/計画付与/自ら取得

 年休は本来、労働者が自由に使える有給休暇です。労働者自身が休暇を取る日を決めて申請し、業務上支障があるなどの事情で事業主が日程の変更させる(これを「時季変更権」といいます)ことがない限り取得できます。しかし、今回の改正ではなかなか年休を取得しない労働者に対して事業主が時季を指定して取得させる時季指定)、あるいは年間の労働カレンダーなどであらかじめ計画して年次有給休暇を取得させる計画付与)などして休暇を取らせる制度となります。
 必要な時季指定日数には、「労働者自身が希望して取得した」場合と「使用者があらかじめ計画的付与をした」日数は控除されます。

   (例)

   労働者自らが5日取得した場合     →使用者による時季指定は不要

   労働者自ら3日取得した橋       →使用者による時季指定2日

   労働者自ら1日取得+計画付与2日    →使用者による時季指定2日

 

年休付与日が法律と異なる場合は「付与後1年以内」が基本

 年休は、法律上「入社してから半年後に10日付与し、以後1年ごとに付与する日数を増やす」仕組みになっています。4月1日入社なら、年休は10月1日に付与します。それから1年間=翌年の9月30日までに5日間以上の年休取得をしたかどうかを見ます。

 しかし一人ひとり入社日が異なると事務が煩雑になるため、企業によっては「4月と10月に繰り上げて付与する」「2年目から全社員4月に繰り上げて付与する」といったルールを定めているケースがあります。

 

 (例) 年休5日以上取得する期間・期限

 ・4月1日入社の社員に半年繰り上げて4月1日に10日付与する →4月1日より1年間

 ・入社の年は半年後の10月1日、2年目以降は4月1日に付与する

   →1年目10月1日より1年間、2年目4月1日より1年間

    =1年目10月1日より翌々年3月31日の間に7.5日以上の取得が必要

 ※厚労省もパンフレットがわかりやすいのでそちらをご参照ください。

  (最下段にリンクを貼ってあります)

 

改正のポイント

  • 全対象者(10日以上の年休付与者)の年休取得状況を把握し、管理簿をつけることが必要です。書式の指定はありませんが、3年間の保存義務があります。
  • 取得日数が足りない労働者に対しては、期限までに5日取得させるため時季を指定して休ませなければなりません。この場合、休暇の日程については当該労働者の意見を尊重すること、とされています。
  • あらかじめ年間スケジュールで年休取得を決める計画付与も有効です。この場合、労使協定により取得時季を定めておく必要があります。
  • 管理監督者も対象となりますので、年休取得状況の把握と取得への指導が求められます。
  • 達成できなかった時、労働者一人当たり×30万円以下の罰金が事業主に課せられます。

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事業者がすべきこと

1、年休の指定付与について就業規則に記載する

(規定例)

第○条 1項~4項(略)(※)厚生労働省HPで公開しているモデル就業規則参照

5 第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかか わらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社 が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただ し、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得し た日数分を5日から控除するものとする。
 


2、個人別年次有給休暇取得状況の管理〜管理簿をつけ3年間保存

 書式の指定はありませんが、以下のような項目があれば管理しやすいでしょう。
    ・氏名

    ・採用年月日

    ・休付与日・日数

    ・年休取得日および日数

    ・年休残日数および時季指定の有無
 
  ⬇️年休管理簿の例

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年休管理簿の例

 

3、対象となる労働者への時季指定(提案)と休暇指定

 年休の取得状況を3月に一回など定期的に点検し、期限内に取得できるよう余裕をもって時季指定の協議を始めるのがよいでしょう。対象となる労働者の意見を尊重しつつ、指定する休暇日を決め、指示し取得させます。


4、計画付与の実施

 労働組合または労働者代表との協定書で取得時期を定めた上で、事業場または部署単位で一斉に付与、班単位で交代制で付与または個人別に休暇の日を指定します。年間の就業カレンダーなどで明示しておくとよいでしょう。

 ただし、この場合は各労働者に対して自由に所得できる日数5日間を残しておかなければなりません。

  例:付与された年休日数 16日の場合=計画付与は11日まで。
 

5、人員確保とシフト管理(部門長への指導)

 年休取得が進んでも現場がきちんと回るよう、現状を分析して人員確保や仕組みの変更を行います。また、現場の無理解から休ませず働かせてしまった、ということがないように部門長にも法改正の内容と仕組みについて周知していくことが必要です。

 

働き方改革は休み方改革

 働き方改革というと長時間労働対策が思い浮かぶ方も多いと思います。もちろん過労死ラインを超えるような長時間労働があってはなりませんし、生産性をあげて労働時間自体を短くしていくことが大切です。

 同時に、心身のリフレッシュには上手な休暇の取り方、活かし方も大切です。今回の法改正で義務化されたことを契機に、休暇を取りやすい職場風土づくりや計画的に休暇をとりワークライフバランスをとっていこう、という社員の意識づくりを進めていきましょう。会社の活性化と健康経営の着実な一歩になると思います。

 

 参考情報〜ぜひごらんください。

1、厚生労働省 働き方改革支援サイト

www.mhlw.go.jp

2、年次有給休暇時季指定義務化に関するパンフレット

https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

 

 

「自分らしく働ける組織=ティール組織」が見えてきた

 

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ダイアローグ


「働く目的は、自分や家族が幸せになること、と言っていいんだな!」

私の頭の中にぐるぐると巡っていた考えを少し整理した時に浮かんだ言葉です。

 

それにしても濃厚な二日間でした。

1月19日〜20日に京都市宇多野ユースホステルで開催された「職場に活かす『ティール組織』〜変化の旅をはじめるための積読消化合宿〜」(Playing Facilitator Lab.の主催)に参加しました。ABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)という手法で分担して本を読み、参加者で共有しながら理解していくというもので、今回のテーマは「ティール組織」(英知出版2018)。ファシリテーターは「ティール組織」の解説者で場とつながりラボhome’s Viの代表理事の嘉村賢州さんで参加者は約10名でした。

 

2日間で読んだ本は、実に8冊!

ティール組織」(部分)

「イラスト解説・ティール組織」

「すいません、ほぼ日経営。」

「英雄の旅」(部分)

「『いい会社』のよきリーダーが大切にしている7つのこと」

「最高難関のリーダーシップ」(アウトライン)

トランジション・マネジメント」(アウトライン)

「ディープ・チェンジ」(アウトライン)

 

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ABDの候補になった本たち

 

合宿ということで時間はたくさんあったとはいうものの、この情報量はすごい! 脳の力を相当使いましたが、意外と爽快でした。

 

アクティブブックダイアローグの手順

①1冊の本を分担して(該当箇所を引き裂いて!)読み、その要約・ポイントとなるところをB5の紙で6枚に書き出す。

②壁に本の構成順に張り出して、担当した人が順番に発表する「プレゼンリレー」を行う。

③質疑応答したあと、ダイアローグで感じたことなどを共有していく。

 

この手法の良いところは、どんなに分厚い本でも分担して読み、共有することで本の内容を理解できること、ダイアローグを通して受け止め方の違いや自身で気づかなかった点に気づくことができるといった点です。何より「積ん読」状態を脱出できます。(笑)

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プレゼンリレー

今回参加してみて、ワークショップとしても優れていると感じました。一つのテーマで深く読んで、一堂に会して共有することでそのグループ・メンバーに共通認識ができます。もし同じ職場のメンバーで行ったら、仕事の改善など次のアクションにつながりやすいのではないでしょうか。

 

※アクティブ・ブック・ダイアローグの詳細は、下記を参照してください。

アクティブ・ブック・ダイアローグ協会

 

www.abd-abd.com

ティール組織」とは

ここのところあちこちで話題になっている「ティール組織」ですが、これはアメリカのコンサルタントだったフレデリック・ラルー氏が、相談にやってくる経営者もそこで働く従業員も“誰も幸せそうではない”ことに疑問をもち、世界中の成功している企業・団体を訪ねてインタビューし、その共通点を整理し提唱した新しい概念の組織論です。上下関係も打ち上げ目標も予算もないのに大きな成果を上げている組織が世界中に現れている!

ラルー氏は、著書で組織の歴史的変遷について類型化しその特徴を色で表しました。  赤=衝動型〜力による支配

 琥珀=順応型〜軍隊など階層的ピラミッドをもつ組織

 オレンジ=達成型〜上場企業や銀行など目標達成を軸にした組織

 緑=多元型〜大きな家族のような組織

 ティール(青緑)=進化型と表現しました。

 

3つのブレイクスルー

組織が進化しティール型になるときの突破口(組織的特徴)を3つ上げています。それぞれ広く深い意味がありますが、ここではポイントだけ紹介します。

・自主経営(セルフマネジメント)

    〜組織に役割はあるが役職はなく、チームをベースにした個々人がその使命を果たすために働きます。

・全体性(ホールネス)

   〜職場で「仕事用の仮面」をかぶることなく、自分らしく働ける、自身や他人との全体性の回復をもとめています。

・進化する存在目的

   〜メンバーにとって組織の存在目的を理解し自己の使命を認識することが大切です。その存在目的も社会の変化に応じて進化することが求められます。

 

ティール組織」については、こちらをご覧ください。

www.eijipress.co.jp

今回の学び

 合宿の最後に、壁に張り出された8冊の本の要約をあらためて見て、自分なりに何が学べたのかを考える時間がありました。その時のノートをもとにまとめてみます。

⬛️「ティール組織」/「イラスト解説・ティール組織」

  • オランダの地域看護組織「ビュートゾルフ」の実践はとても素晴らしい。目指す組織の例がある。世界や日本でもこれからどんどん出てくるだろう。
  • もっとも心に残ったのは「全体性(ホールネス)」、これは人間としての全体性を取り戻すこと。つまり、人間らしく働ける組織を目指していくことなのだ。
  • ティール組織は、「常に進化する目的」を持ち、更新し続ける。
  • 自主経営(セルフマネジメント)〜先行例の多くはチームによる経営が行われている。まずは人間。個人と組織が目的達成のため知恵と力を出しあっている。

⬛️「すいません、ほぼ日経営。」

  • この会社は、“自分が役立つ喜び”を得て「やりたいことの組み合わせ」で運営されている会社なのだ。
  • 仕事のスタンスは「誠実と貢献」。誠実かどうかは自分自身で測れる。
  • 安心して働けて、幸せを追求できる環境を作る、これが社長の役割。じぶんのリーダーはじぶんなのだから。

⬛️「『いい会社』のよきリーダーが大切にしている7つのこと」

  • 数字よりも人を大切に。仕事はスピードより順番。
  • 仕事に感情を忘れるな〜心理的安全性の確保

⬛️トランジション・マネジメント」

  •  ・変化は問題ではない。そのトランジションを乗り越えられるかどうかだ。
  •  ・3つの段階 <終わり>→<ニュートラルゾーン>→<新しい始まり>
  •  ・ニュートラルゾーンを創造の時期としてとらえ活かす。

⬛️まとめ

 人が働く目的=自身と家族の幸せ

 仕事の幸せ=顧客に対する誠実と貢献によって

 組織の変革〜進化する組織へ

     自主経営/人間らしさを取り戻す(ホールネス)/常に進化する目的

 Teal組織への道=目的ではないが、そこに到達できる

 変化への対応=トランジションを乗り越える

 

ティール組織」は600ページに及ぶ大著で、なかなかとっつきにくいものです。しかし、ABDによる勉強会やワークショップは各地で開催されていて、徐々にその考え方が広がっています。本文も事例紹介や各論の解説などは思わず引き込まれてしまうとこも少なからずあります。何より進化した組織の向こうに、労働における人間らしさの回復という姿を垣間見ることができたのが、私にとっては最大の成果でした。

……学習は継続していきます(^o^)

 

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