知っていましたか? 健康保険の制度が変わりました 〜2022年、主な法改正〜
2022年がスタートしました。今年予定されている雇用・労働関係の主な法改正についてご紹介していきます。
【1月から改正された健康保険法の改正内容】
1.傷病手当金の支給基準変更
傷病手当金とは?
健康保険(協会けんぽ、健保組合)の加入者(被保険者)が、病気や怪我で仕事を3日連続して休んだ場合、4日目以降に1日の賃金相当額の3分の2が「傷病手当金」として健康保険から支給されます。ただし、休んでいる期間に対して傷病手当金額以上の給与等が支給されている場合は対象となりません。
1日の賃金相当額は、次のように算出されます。
<支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額>÷30日
長期の入院が必要で年次有給休暇も残り少ない、といった時には傷病手当金はありがたい制度ですね。
支給基準の変更内容
傷病手当金の支給は1年6ヶ月されますが、その基準が「暦日」から「通算」に改正されました。
(改正前)支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間支給する
(改正後)支給を始めた日から通算して1年6か月間支給する
これまでは、支給開始から1年6ヶ月を超えると支給が打ち切られたので、たとえば長期入院していて回復したので仕事に戻り、その後同じ病気で体調を崩してしまい再度入院した、といったケースでその期間中に1年6ヶ月を超えると、それ以降の手当は支給されませんでした。
しかし、改正後は「支給開始日から暦日で1年6月の計算を行い、支給日数を確定」し(たとえば、2021年2月1日から2022年7月31日なら549日)、支給日数累計がこの日数に達するまで手当金の支給が継続されます。この違いは大きいですね。これまでよりも安心して治療に専念できるようになり、治療と仕事の両立が図りやすくなります。
2.任意継続制度の変更
任意継続被保険者制度とは
健康保険の加入者が退職し、その被保険者資格を喪失した場合に、次のいずれの要件を満たせば退職後最長2年間、引き続きそれまで加入していた健康保険に加入できる制度です。
①資格喪失日の前日までに「継続して2か月以上の被保険者期間」があること。
②資格喪失日から「20日以内」に申請すること。(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)
任意継続被保険者の保険料は、それまで会社が負担していた分(多くは2分の1)の保険料も全て負担することになります。退職直前の給与額によっては国民健康保険より保険料負担が低い場合もあるため、退職時にいずれの保険制度に加入するかの比較し選択することになります。
変更内容
継続被保険者は、任意脱退の制度がありませんでしたが、今後申出書を提出することにより任意脱退が可能になりました。また、保険料の基準見直しも行われます。詳しくは加入されている健保(協会、組合)にてご確認ください。
【2022年の主な雇用・労働分野の法改正】
今年施行される改正法では、パワハラ防止のための措置の義務化が中小企業にも適用(4月)男性の育児休業取得を推進する育児休業制度を変更(4月、10月)など大きな制度変更もあります。改正に伴い事業所として準備をしておくことも必要です。
(主な改正一覧表)
<2022年1月1日施行>
健康保険法等 傷病手当金制度の見直し
・傷病手当金支給日数の通算化
・任意継続制度〜保険料基準見直し、任意脱退が可能に
雇用保険法 高年齢被保険者の特例(加入要件)
・65歳以上、2事業所で週20時間以上働いている人の加入可に
<2022年4月1日施行>
育児介護休業法 育児休業等の個別周知義務化
・妊娠・出産を申し出た労働者への説明と意向確認の義務
・取得しやすい雇用環境整備
・有期雇用労働者取得要件緩和
女性活躍推進法 一般事業主行動計画の策定義務
・策定、周知公表、届出
総合推進法 パワハラ防止措置の義務
・厚労省「指針」に沿って体制整備
・相談窓口の設置、周知、研修等の実施
<2022年10月1日施行>
健保法、厚年法 社会保険の適用拡大
・特定事業所、101人以上の事業所では週20時間以上
健保法、厚年法 育児休業中の保険料免除見直し
・月末が育休期間+2週間以上取得
・1月超の育休取得者に限り賞与保険料を免除
育児介護休業法 出生時育児休業制度の創設
・生後8週間以内に4週間まで
・分割取得2回まで
・労使協定で一部就業可能に
育児休業給付金の創設
・出生時育休取得者に給付
有期雇用労働者への対応
・「引き続き1年以上」要件廃止
(2022年1月 社会保険労務士 赤木一成)