「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

これって、パワハラ?  -Part 2-

 

 

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「こらっ! 何やってんだ、バカ! ここからすぐ出ろ!」

「えっ!? あ、すみません」

 

 製造係の鈴木主任に用があって工場にやってきた総務課の田中さんに対して、工場長の佐藤さんは、顔を真っ赤にして怒鳴りました。びっくりした田中さんは、慌てて工場から出て行きました。

 

さて、これはパワハラでしょうか?

「こら!」とか、「バカ」とか言っちゃっていますし、かなりの剣幕で怒鳴ったみたいなので、パワハラなのでしょうね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えは、ノー。パワハラではありません。

 事情を詳しく見てみましょう。

 この会社は、機械部品を製造する、従業員100名ほどの小規模企業です。会社の本部機能(営業や管理部門)と工場が一つの事業所にある大きめの町工場といった感じでしょうか。

 しかし、技術力で勝負するこの会社が手がける製品は、スマートホンなどに使われる小さくて精密なものが多く、工場内の整理整頓、クリーンな環境維持が必須です。そのため、工場内での服装や入場の手順を厳しく定めています。また、製造ラインの一部にはロボットも導入されていて、不用意に近づくとアームと接触する危険もあります

 会社に入ってまだ日が浅い田中さんは、そんな厳格なルールを知らずに、鈴木主任にタイムカードの集計のことを訊ねるために、不用意に工場内に入ってしまったのです

それを目撃した佐藤工場長は、製品の保全と安全管理のため、急いで退出するよう注意したのです。もちろん、落ち着いて丁寧に説明した方がベストですが、製品の品質や安全に関わることなので、思わず怒鳴ってしまった、というわけです。

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工場に入るには決められた服装で!

 

パワハラ要件「業務上の必要な範囲を超える」とは

守るべきルールや安全確保のため指導が必要

 このようなケースは、パワハラの要件である「業務上必要かつ相当な範囲を越え」たとは言えず、業務上の指示・指導の範囲であると言えます。例えば、遅刻が何回か続いている社員が遅れて職場に入ってきた時に、他の社員の前で注意し、反省を促すといったこともパワハラとはならないでしょう。

※もちろん、同じシチュエーションでも暴力を伴なうものは許されず、パワハラとなります。

 

人格否定はパワハラ

 逆に、指導に当たって「お前は係長だろ。係長らしい仕事をしろよ」「お前は覚えが悪いな」「バカかお前は! 係長失格だ」と言うように、その人の地位そのものや能力・人間性を否定するような言葉・態度で臨むのは、パワハラといえます。

 

 海上自衛官パワハラ事件に関する判例では、違法(パワハラを認定)の理由として、次のような点を挙げています。

①緊急を要しない場面で繰り返し厳しい発言をした

②個々の行為や技能について指摘するにとどまらず地位や人格に言及した

③指導の後に心情を和らげるような措置もとっていない

福岡高裁平成20年8月25日判決)

 怒る女性の上司のイラスト(激怒)

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感情に任せて怒らない

 

 

罪を憎んで人を憎まず

 「罪」を部下のミス・行為と置き換えてみてください。仕事に関わる失敗や技能の程度について、個々に指摘・指導することは、パワハラにはなりません。注意の対象が、「人」〜その人そのもの、人格〜ではなく、「行為」であれば、適切な指導の範囲となります。行為を改めることはできますが、人格・性格や持って生まれたものは直す事ができないことですし、そのような資質は仕事上指導されるものではありません。

 部下の立場から見たら、感情的に怒鳴り続けられ、人格を否定されるような指導を受けたら、モチベーションは上がりませんし、上司への憎しみこそ増すものの信頼度は落ちることは容易に想像できます。

 

業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動とは

 前回のブログでも紹介しましたが、「業務上の必要」について、厚生労働省の「平成30年度・職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」では、「社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性のない又はその態様が相当でないものであること」としています。この要素に当てはまる主な例として、次のような行為が考えられるとしています。

  • 業務上明らかに必要性のない行為
  • 業務の目的を大きく逸脱した行為
  • 業務を遂行するための手段として不適当な行為
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為

   リーダーには、上記の要件に当てはまらないような指導に対する考え方や行為が求められます。

 

業務上の指導は適切に実施すべし

 「こんなことをしたら、こんなことを言ったら、パワハラと訴えられるのか?」と部下への指導を躊躇してしまう管理職も少なくないのではないでしょうか。しかし、実際の仕事では、事業目的・目標を達成するために、部下を指導しリードしていかないと動かないことはいくらでもあります。その時に、指導を放棄してしまったら、事業はストップしてしまい、業績悪化や人が育たない職場になってしまいます。

要は、タイミング良く、適切な指導をすることがリーダーには求められています。

 

では、どんなことに留意をしていけばよいのでしょうか。

 

業務上指導の留意点

 あらためて、業務上指導をする上での留意点をまとめてみました。

1、行動を起こす前に「ひと呼吸」

 ①感情的に注意・指導をしない

  ・感情のままの言動や、人格否定など不要な事を言ってしまう

  ・注意を受ける方も、感情をぶつけられると素直に受け止められない

  ・怒りやすい人は、アンガーマネジメントで自分をコントロールする

 ②注意指導すべき問題点は何か、事実を確認し分析する

  ・注意指導の目的とゴールイメージを持って臨む

  ・具体的な問題点や指導すべき行為を明確にしておく

2、対等な話し合いの場をつくる

 ①指導の基本は1対1、別室で行う

 ②一方的に「あなたが悪い」と決めつけない

  ・事実を確認する

  ・相手の言い分を聴き、受け止めた上で問題点を指摘する

 ③厳しい叱責・指導の後には精神的なフォローをする

  ・指導の後には、暖かい笑顔で激励も

  ・実際にフォローアップの手をうつ

 ④日頃からコミュニケーションをとることが大切

3、言葉を尽くして伝える

 ①「罪を憎んで、人を憎まず」のスタンスで。(人格攻撃は厳禁)

 ②暴力は論外 →即、犯罪です!

4、対応の難しい部下の問題を一人で抱え込まない

 ①長時間・複数回にわたり、同じ事を繰り返し指導するということは避ける

 ②何度指導しても改善が見られない場合は、1対1でなく、第三者(上司など)にも関わってもらって対応していく

5、相手の事を思う

 ①相手を自分の家族など大切な人に置きかえて考えてみる

 ②部下の成長を長い目で見る、自身の関わり方を再度考えてみる

 

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ハラスメントのない元気な職場を!

 あなたは、現在、部下への指導をどのように行なっていますか?

ハラスメントのない適切な指導は、部下のモチベーションをアップさせ、能力を引き出し、結果として職場の目標達成につながります。

 上記を参考にしていただければ幸いです。

 

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