「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

これって、パワハラ?   Part 1

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 前回のブログでパワーハラスメントパワハラ)について法制化され、事業主に防止や相談体制整備が義務化されたことをお伝えしました。では、パワハラって、どういう行為を言うのでしょうか? 今回は、その定義について解説します。

 

パワハラの定義

 今年5月に成立した、改正労働政策総合推進法でパワハラの定義を下記のように定めました。

 ①優越的な関係に基づく

 ②業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動により

 ③労働者の就業環境を害すること

 

 それぞれの内容を見てみましょう。

 

優越的な関係

 <上司→部下>

  • 職場における優越的な関係といえば、部下に対する上司が典型的な優越的関係と言えます。特に、人事権を持っている上司は、部下にとっては絶大な力をもった存在と言えます。また、直属の上司でなくても、会社の重要なポストにいる者と社員との関係も優越的関係になります。

 <先輩→部下>

  • 社内では、同じような立場にいたとしても、入社したばかりの社員にとって、ベテラン社員は仕事の能力や人脈など実力差を感じる存在で、優越的な関係と言えます。その先輩としての力を背景にした嫌がらせなどもパワーハラスメントとなります。
  • これは、正社員だけでなく、パート社員同士の関係などでも起こりえます。

<正社員→非正規社員

  • 雇用形態によるパワーの差は、職場では歴然としたものがありますね。任されている職務の違いやそれに伴う権限の違いも大きいでしょう。たとえ新入社員であっても、非正規社員派遣社員にたいして業務上の指示・命令をする、ということもあります。明らかに優越的関係といえるでしょう。

<同僚→同僚>

  • 職場における役割は変わらず、社歴もそれほど違わない同僚同士であったとしても、グループを作り職場内いじめを行う、といったケースが考えられます。職場という組織にあって、実質的なパワーを誰がもっているのか、という点が優越的関係を左右します。

<部下→上司>

  • 例えば新任の店長さんが赴任してきて、そのお店の改革を進めようと試みた時に、担当者が新任の上司が気に入らないとして、集団として抵抗または拒絶するといったケース考えられます。このように部下である担当者が、業務上必要な知識や豊富な経験を有している場合も優越的な関係にあたります。

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業務上必要かつ相当な範囲を越えた言動

 業務上の必要について、厚生労働省の「平成30年度・職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(以下、「検討会報告書」)では、「社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性のない又はその態様が相当でないものであること」としています。この要素に当てはまる主な例として、次のような行為が考えられるとしています。

  • 業務上明らかに必要性のない行為
  • 業務の目的を大きく逸脱した行為
  • 業務を遂行するための手段として不適当な行為
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為

 「業務上の必要」については、職務の内容、業務の危険度、対象となる労働者の熟練度など職場のシチュエーションによって異なってきますので、その都度判断していく必要があります。

 また、個人の受け取り方よっては指示・命令等に不満を感じることがあったとしても、それらが業務上適正な範囲で行われている場合にはパワハラには該当しません。

 

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業務上必要な指導はOK

 

労働者の就業環境を害すること〜どんな行為がパワハラになる?

 パワハラは、行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、または行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者の就業上看過できない支障が生じる行為を言います。(検討会報告書より)

 また、判断に当たっては「平均的な労働者の感じ方」を基準にするとしています。この点は、行為を受けた労働者の主観を基準とするセクシュアルハラスメントとは異なります。

 ただし、今回の法改正に当たっての参議院付帯決議(第9項1)では、「パワーハラスメントの判断に際しては、『平均的な労働者の感じ方』を基準としつつ、『労働者の主観』にも配慮すること」としています。今後厚生労働省が作成する「ガイドライン」にどのように反映されるのか、注目されます。業務上適切な範囲で行なった指導に対して、「俺は不満だ」とパワハラを主張するという者が増えるのではないかと懸念されます。

 

パワハラのパターン(行為類型)

 では、具体的にはどのような行為がパワハラに当たるのか、検討会報告書では下記のように6つの行為類型を整理しています。(詳細は、次回に解説します)

  1. 暴行・傷害〜身体的な攻撃 
  2. 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言〜精神的な攻撃
  3. 隔離・仲間外し・無視〜人間関係からの切り離し
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害〜過大な要求
  5. 業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと〜過少な要求
  6. 私的なことに過度に立ち入ること〜個の侵害

 

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風通しのよい職場を!

 パワハラを未然に防ぐことが大事

 職場の中で発生した行為がパワハラに該当するのかどうかは、3つの側面から個々の状況を具体的に検討して判断していくことが求められます。企業経営者や職場を預かるマネージャーは、基本的な知識としてもって、対策を講じてパワハラを未然に防ぐことが求められます。

次回、6つの行為類型について、判例などを紹介しながら解説していきます。

 

<参考>

厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000201255.html

 

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