人生100年時代の生き方・働き方を考えるには……
「人生100年時代っていうけど、そんな先の話で考えようがない」
そう思っていませんか?
すでに人生100年時代は始まっている
長寿社会日本、平均寿命は、2017(平成29)年で男81.09歳、女87.26歳となっています。これはその年に0歳だった人が何歳まで生きるかを推計したものですが、同年の主な年代での平均余命(残り何年生きるか)でみると、以下のようになっています。(いずれも厚生労働省ウェブサイトより)
40歳 男42.05年 女47.90年
50歳 男32.61年 女38.29年
60歳 男23.72年 女28.97年
65歳 男19.57年 女24.38年
つまり、60歳定年後でも24年〜29年の人生が残っていることになります。
<厚生労働省のページから>
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-02.pdf
現20代の多くは100歳まで生きる?
現在の20代は、100歳まで生きる人が当たり前のようになっていると言われています。彼らが定年を迎える頃、仮に一般的な定年が70歳となっていたとしても、人生はまだ30年残っていることになります。こうした長寿社会の中で生き方を大きく変えていかなければならないと警鐘をならしたのが、ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授とアンドリュー・スコット教授が書いた「LIFE SHIFT」です。この本は、キャリア研究者、キャリアコンサルタント、人事担当者だかでなく企業経営者にも必読書と言えます。
「LIFE SHIFT」が提起していること
キャリアだけでなく、生きていくための資産の確保も必要となります。そのために“定年前後から考え始める”のでは遅いと指摘しています。資産には金銭もありますが、知識や能力や人脈・ネットワークといった目に見えない変化していく資産も重要です。そのために、若いうちから視野を広げ様々な経験と学習をしていくことが重要です。教育という自己投資を積極的に行うこと、エクスプローラー(探検者)として様々な経験を積むこと、そして中年期にさしかかってから自己の再創造(リ・クリエーション)を行い、定年後に新しいキャリアを作っていくことを提案しています。
<出版元・東洋経済新報社の関連ページ>
宮城まり子先生の講演から
先日、日本の人事部主催の「HRカンファレンス2019春」大阪会場に参加しました。そこで、宮城まり子先生(キャリア心理学研究所・代表)の「人生100年時代のライフキャリアデザイン〜これからの生き方・働き方・学び方を考える〜」という講演を拝聴しました。
宮城先生の講演はいつ聴いてもわかりやすく、丁寧に語ってくれます。今回も大変勉強になりました。キャリアコンサルタントとしての仕事上も参考になるお話だったのはもちろんですが、私自身のこれからのキャリアについて大変考えさせられる内容でした。
<宮城まり子先生のプロフィール〜慶応義塾のWebサイトより>
人生100年時代のライフキャリアデザイン
以下、ポイントをご紹介します。★は、筆者の感想、コメント。
人生の節目と気づき
節目ごとに自己を見つめ直し、いかに気づくかが大事
心の中を言語化することで、自己への深い気づきと行動変容につながる。
「50歳は人生の正午」〜折り返し点であり後半の人生を考える
人生100年時代のキャリアデザイン
長寿化により人生のステージの移行を複数経験する。定年後30〜40年の人生がある。様々な選択肢があり、選択の連続となる。
「生涯発達の時代」〜人は生きている限り死ぬその日まで、生涯にわたり絶えず成長・発達し変化する存在である
3分割人生からマルチ人生へ
これまで 学生(勉強)→社会人(仕事)→定年後(余暇)
これから 経験・知識・スキルの陳腐化により何度も学び直しが必要
環境変化に合わせた、新たなキャリア開発・デザインが求められる
キャリアサバイバル〜環境変化に適応する
「組織内キャリア」から「生涯キャリア」への転換が必要。
生涯にわたり自分をどう生かすか。
人生の長さではなくどう生きたか(内容と質)が問われる
★定年後から30年の人生があるとすれば、その間にもいくつものキャリアチェンジを求められることが起こりそうです。その都度、というか継続して学習し、自分への投資を怠らず(体力づくりなども含まれますね)、環境変化に対応して変化・成長していくことが大切だと思います。
変化する環境への適応 学び直しと生涯“育自”
環境の変化を確実に捉え、自らキャリアデザインを見直し、変更する勇気も必要。
変化に対して変幻自在に対応する。
★「生涯育自」という言葉がとても印象に残りました。
キャリア形成への6つの問い
①自分はどうありたいのか、何をしたいのか。自分をどう活かしたいか
②自分は何に興味・関心があるのか
③何ができるのか、強み、売り、専門性、付加価値は何か
④大切にしたい価値、価値観は何か
⑥これらをふまえて、具体的にやるべきこと、行動は?
★この問いについては、講演を聴きながら、私自身も考えてみた、これからも節目節目で考え、答えを見つけていかなければならないと感じました。
キャリア形成への3つのアプローチ
①現在の担当職務、役割・責任に真摯に取り組む
②3・5・10年後先を展望したキャリアの準備・行動、仮説をもつ
③仕事以外の学習、活動、趣味を積極的に拡張する
★大事なアプローチですね。肝心なのは、できるだけ若い時からアプローチし始めておくことです。定年直前からでは間に合いませんよ!
パラレルキャリアと複数の名刺
単一のキャリアではなく複数のキャリア、パラレルキャリアへ
本業の他に社会活動、Pro Bono(本業の知識・スキルを活かした社会貢献)
職場でも家庭でもない第三の居場所づくり
複数のキャリアを並行して形成するパラレルキャリア
現役時代から時間をかけ独自の「ライフワーク、生きがい、居場所」を創る
★最近、パラレルキャリアという言葉をよく耳にするようになりました。単に副業・兼業のことを言うのではなく、本業との関係でも活きるし、ライフワークや居場所を創る意味合いがあることを知りました。なんでもかんでもではなく、じっくり取り組めるテーマを見つけることですね。
中年期の発達ステージと心理特性
①老いの自覚〜身体変化と思秋期
②視座の逆転〜終わり(定年など)から逆算して捉える
③有限性の自覚〜自分の限界、寂しさ・侘しさ・虚しさを感じる
④アイデンティの変化〜名刺は借り物で自分自身ではない、「自分とは何か」
⑤変化とストレス〜環境変化と新たなストレス、親子・夫婦・老親との関係
★この指摘はとてもよくわかります。経験者として。 こうした心理特性と環境の変化によって、キャリアに関する葛藤や不安、落ち込むという現象が出てきます。そこを乗り越えていくために、キャリアや生き方について考え、選択・意思決定していく必要があります。
キャリア選択と意思決定
①キャリア選択と取捨選択
・何を優先させ、何を選択するのか。何を諦め、何を捨てるのか。
②選択の条件・価値基準を明確化する
・大切にしたい価値、価値観の見直し
・譲れない人生の条件は何か
・自分にとって「人生の成功・幸福」とは何か?
大切なのは「主観的幸福感」
★こうした意思決定の場には、キャリアコンサルタントにより支援が有効です。
キャリアの転機にあたり、これからの人生・キャリアを考え、目標化して行動に移していくことが大事。
<目標なくして行動は始動しない>
<行動なくして目標は達成されない>
まずはやってみる、試してみる、行動しながら軌道修正していく。
不確実な明日を前向きにとらえ、たまたまの偶然(Planned Happenstance/Dr.Krunboltz) を意味あるものに変えていく。偶然を掴むための日頃からの準備を怠らないこと。
キャリア自律の6要因
①自分自身への深い気づき
②価値観の明確化
③継続的な学習(たゆまぬ先行投資)
④未来志向
⑤ネットワーク形成(幅広い人脈)
⑥柔軟性と回復力(レジエンス)
自分のキャリアを開発し、育て、磨くのは自分自身
自分のキャリアは自分で……
宮城先生は、キャリア自律ということが人生100年時代にとても重要だとおっしゃっていました。自分のキャリアや生き方は、自分自身で考え、意思決定し、行動し、変化させていくしかないんですね。
職業人生の早い段階からこうした観点を持って、目の前の仕事に取り組み、同時に将来の自分のためになる投資(教育投資、経験投資、資産形成など)を行っていくと、将来の選択肢(可能性)が広がります。
「もう中年期に入っちゃった!」という方も、自己を振り返り、変化を恐れず取り組めば、まだ間に合います。なぜなら、現役のあなたには30年以上の次のステージが待っているからです。
キャリアコンサルタントも活用してください
私たちキャリアコンサルタントは、働く人や働こうとしている人に寄り添って、ご自身のキャリアを振り返り、新しいキャリアプランを作っていく、あなたご自身の取り組みを支援することを仕事にしています。小さなことでも相談にのりますよ!