「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

働き方改革法案の行方……

国会空転

 現在国会では、森友・加計学園問題財務省の文書改ざんや次官のセクハラ問題、防衛省の日報問題など行政を巡る疑惑や問題の発生で空転している状態です。新聞報道によれば、財務大臣の辞任要求や柳瀬元首相補佐官の証人喚問要求に与党が応じなかったため昨4月20日野党6党が国会審議を欠席し、今後の審議日程も定まっていないということです。政府が今国会の最重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」を審議する衆議院厚生労働委員会は、野党欠席のまま開会、審議を進め野党の質問時間を空費したとのことです。

mainichi.jp

 働き方改革関連法案の内容

 昨年来、「働き方改革」について法案検討や経済界・労働界での議論が活発化し、様々な実験や制度改善も進み始めています。しかし、その根拠となる労働基準法など関連法の成立にはまだまだ時間がかかりそうです。

 今回は、現在の国会に提案されている法案の内容をご紹介します。

提案されている法案(4月6日提案)では、従来の法案に加え中小企業・小規模事業所への配慮が強化されています。以下、主な内容をみていきます。

 

働き方改革の総合的かつ継続的な推進

 働き方改革に係る基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定める。(雇用対策法改正

 

II、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現

 ※2019年4月1日施行/中小企業は2020年4月1日、一部特例あり。

1 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法労働安全衛生法

時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する。

(※)自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外がある。研究開発業務について、医師の面接指導を設けた上で、適用除外となる。

・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。(2023年4月1日施行)

・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない。

 →意外と知られていない改正案です。

高度プロフェッショナル制度の創設等を行う。(高度プロフェッショナル制度における健康確保措置を強化)

〜職務の範囲が明確で一定年収以上(少なくとも1000万円以上)を有する労働者が高度な専門知識を活かした業務に従事する場合に、一定の要件を満たしたすことを条件として、労働時間・休日・深夜勤務割増の規定を適用除外とする。

 →野党は長時間労働を促進する制度として反発しており、争点となっています。

 

・労働者の健康確保措置の実効性を確保する観点から、労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければならないこととする。(労働安全衛生法の改正)

 

2 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)

・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない。

 →長時間労働を抑えるための新しい考え方です。具体的な時間数については別途指針を作る方向です。

 

産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)

・事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供することとするなど、産業医・産業保健機能の強化を図る。

 

Ⅲ、雇用形態にかかわらない厚生な待遇の確保
 ※2020年4月1日施行/中小企業は2021年4月1日施行

1 不合理な待遇差を解消するための規定の整備
           (パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

・短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の差を設けることを禁止する。

・個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる判断されるべき旨を明確化する。

有期雇用労働者の均等待遇規定を整備する。

派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化する。

・これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備する。

 

2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
             (パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化する。

 

3 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

・1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備する。

 

 詳しくは厚生労働省のWebサイトをご覧ください。↓

www.mhlw.go.jp

厚労省、改革推進に重点

 厚生労働省は関連法の成立を前提に、働き方改革を強力に推進したい考えです。今年度から都道府県労働局に「働き方改革推進支援センター」を設置し、体制を整えようとしています。また、全国社労士会、商工会議所、市町村行政相談センターや金融機関など各団体に協力を求め広報活動を展開していく方針です。

 

セミナー等も2600回、助成金

 事業者向けの働き方改革セミナーは、全国で約2600回開催を計画しています。労働保険事務の年度更新手続きの際に三六協定や就業規則に関する周知・相談体制をとるなど複合的に対応していく方針です。また、中小企業向・小規模事業者向け対策費として約2000億円を計上、時間外労働等改善助成金やキャリアアップ助成金などの助成金約960億円、IT導入助成金にも500億円を計上しています。

 

 

企業もこうした情報提供や助成金もうまく活用して、働き方改革と生産性向上が進んでいくとよいですね。

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