「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

ブラックボックス と #Me Too

 この本を読んで、あなたにも想像してほしい。いつ、どこで、私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ。 

伊藤詩織著「ブラックボックス」(文藝春秋社/2017)の「はじめに」に書かれた言葉です。

 

ブラックボックス

 ジャーナリストである伊藤さんが、就職の相談で会った元TBS記者山口氏にレイプされた事件について、被害者自身がその経過や事後の加害者とのやりとり、警察・検察の動きなどを自らも取材してレポート=告発しています。安倍首相に近いと言われる元記者に対して用意された逮捕状は執行されることなく、直前で逮捕は取りやめとなった。検察の判断も不起訴処分となり、検察審査会に申し立てを行ったことを受けて、伊藤さんは2016年5月、顔を出して記者会見を行いました。マスコミも取り上げたので、この会見について覚えていらっしゃる方も多いと思います。その後、検察審査会が「不起訴相当」の結論を出しました。彼女は、性犯罪のブラックボックスに光をあてるために出版を決意したのです。

books.bunshun.jp

 

性犯罪を裁くまでの厚い壁

 本書では、事件の経過とともに日本の性犯罪が親告罪であること、準強姦罪の立証・立件にいくつもの壁があり被害者にとって大変な苦痛を伴うものであることを、自らの心情と重ねて書き出しています。政治的な背景は別にしても、日本の性犯罪に対応する法整備や行政対応は遅れていると、北欧の例などをひいて指摘しています。スウェーデンでの取材で、365日24時間レイプ被害にあった人を受け入れる「レイプ緊急センター」をもつ総合病院のプライバシーを守る設備上の配慮や検査や治療、カウンセリングを受けられる体制ができていることを紹介しています。日本でもこうした組織・体制づくり、デートレイプドラッグの検査体制の整備が必要であると訴えています。

 

法改正で一歩前進

昨年7月に施行された改正刑法により、(準)強姦罪は「(準)強制性交罪」となり、親告がなくても公訴でき、これまで被害対象は女性に限られていたものが男性への犯罪行為も対象となりました。長年の関係者の努力の成果です。

 

www.sankei.com

 

関連犯罪は増加傾向

1月18日警察庁が発表した2017年の刑法犯件数(速報値)は、全体で91万5千件で前年比8.1%減で戦後最少記録を更新したそうです。しかし、強制性交等は12.3%増で1111件でした。この数字も氷山の一角かもしれません。

 

mainichi.jp

 

これまで表に出にくい性犯罪でしたが、相談・告発がしやすい制度や社会づくり、人々の意識を変えていく必要があります。そのためにも起こった事実を知り向き合う努力が私たちにも求められていると思います。

 

#Me Too

 

職場の忘年会でセクハラにあい、上司に訴えたが、加害者からの謝罪や処罰がないばかりか、訴えた当初は上層部から『そういう事実は確認できませんでした』と、まるでこちらがうそをついているかのように言われた。 

 朝日新聞のフォーラム「『#METOO』どう考える?」のデジタルアンケートに寄せられた40代女性の声です。

 昨年アメリカ・ハリウッドで有名プロデューサーによるセクハラを女性たちが告発したこときっかけに、「MeToo(私も)」と次々に告発が起きました。SNSで拡散するため#(ハッシュタグ)をつけて発信したことから全世界に広がるムーブメントとなりました。日本でも、こうした動きが広まっています。これらは、社会的意識を変えていくことにつながっていくかもしれません。

www.asahi.com

 

こうしたセクハラや性犯罪を起こさない、起こさせないためには、互いを人間として尊重し合う人間性を持つことと、社会の規範を作っていくことが大事だと思います。

さいごに、伊藤さんからのメッセージをご紹介します。

 

「今まで想像もできなかった苦しみを知り、また想像以上に多くの人の心の中に存在していることを知った。同じ体験をした方、目の前で苦しむ大切な人を支えている方に、あなたは一人ではないと伝えたい」 (あとがきから)