「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

精神障がい者の能力を活かすマネジメントの秘訣

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「なるほど、そういうことか。当たり前のことをやるということなのだ」

  先月、日本の人事部主催のHRカンファレンス2018(大阪)で特別講演「これからの管理職に必要な精神障がいのマネジメント・戦力化方法」を聞いて、感じたことだ。講師は、パーソルチャレンジ株式会社の佐藤謙介氏。人材サービスのパーソルホールディングスの特例子会社で、自社で障がい者雇用を行うだけでなく企業・団体への障がい者採用と雇用安定のコンサルティングなどを行なっている会社だ。いわば障がい者採用・雇用を専門とする会社である。

 なので、講演タイトルにあるように精神障がい者の人材活用の特別な秘策があるのかと思って参加した。今年障がい者雇用率が改定され(2.2%)、同時に精神障がい者もその雇用対象とされた。このため、精神障がい者の採用と安定的な雇用=人材活用に多くの企業の関心が集まっている。

 

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理想的な上司の部下へのアプローチ

 講演ではまず「障がいある社員が活躍するためのマネジメント」として、パフォーマンスが上がらないスタッフへのアプローチとして「一般的な上司」と「理想的な上司」を対比して紹介し、精神障がい者の適切なマネジメントは可能だということを示した。

  • 一般的な上司

 ・もう一度やり方を教える

 ・できる人と入れ替える

 ・もっと簡単な仕事に変更する

 ・部下ができない分は自分で受け持つ

 ・諦める、叱る

  • 理想的な上司

 ・スタッフの得手不得手を分析する

 ・得意な業務に変更する

 ・数値で分析し、業務プロセスを改善する

 ・口頭指示ではなくマニュアルを作る

 ・相手の理解度に合わせて段階的に教育する

 

 さあ、比べてみていかがだろうか? あなたはどっちにちかい?

 上記は、「精神障がい者」へのアプローチではないことにご留意いただきたい。

 

仕事の属人化から、分業化への転換がカギ

 オフィスのダイバシティマネージメント(多様な人々の能力を活かす経営)のキィは「属人化から分業化への転換」だという。オフィスの仕事は、放っておくとどんどん属人化する。その人しか知らない仕事の仕方、進め方やネットワークなどがオフィスにはいっぱいある。私自身も経験があるが、“自分がやらなきゃ”とか“人に頼むより自分でやった方が早い”とどんどん仕事を抱え込んだり、複雑化させたりしていないだろうか。自分以外の人からは、どんな仕事をどこまでやっているのか見えないので、サポートできないばかりか到達状況もわからない。ある日突然破綻する、といったことも。(もちろん成功することの方が多いのだろうけど)

 これでは組織としての仕事にならないし、働き方改革や生産性向上には繋がらない。それどころかリスク管理もできなくなってしまう。

 

やっぱり、仕事の「見える化」が必要だ

 佐藤氏は、属人化をさせないためには「見える化」をすることが大事だと説く。業務指導のあり方も、一方通行的な「教える」から転換が必要だ。業務マニュアルやチェックシートといった業務内容の見える化を行い、それに基づいて教え、自ら学ぶという「ドキュメント&教える+自分で学べる」仕組みが必要だ。こうすれば知識は業務マニュアル・チェックシートに集約され、業務ノウハウは会社に残っていく。見える化は、まずメモを書くことから始めると良いそうだ。作業の指示もできるだけメモを書いて説明する、会議の議事録も板書したものを写真に撮ると行ったところから始める。それらを手順書、マニュアルに整理していけばよい。

 ん? 待てよ。この仕組みをつくるのって、何も精神障がい者に対するマネジメントとして特別なことでもなんでもないではないか?

 そうなのだ。仕事・職務の分析し基準書やマニュアルに整理し、それに基づく役割分担をしていく、仕事も状況も見える化することは、職場の効率、生産性を上げる特効薬になるといっても過言ではない。

 

精神障がいの特徴

 一方、精神障がい者の特徴を理解した上でのマネジメントも重要だ。いちばんの特徴は「不安」が大きいということなのだそうだ。自分でコントロールできそうにないこと不安はストレスにつながり「メンタルダウン」を引き起こすことがある。不安が大きくなりストレスがたまり、体調不良、パニック、睡眠障害、うつ、業務ミスなどの症状を引き起こしてしまう。

主な症状

○身体症状:眠れない、疲れる、食欲がない、発熱・腹痛やめまい

○行動症状:遅刻・早退・欠勤が増える、ケアレスミスが多くなる、判断を間違う、集中色が低下するなど

○感情や思考に現れる症状:気が滅入る、やる気がない、イライラ、他責傾向(他人や病気のせいにする)など

 

障がい者の仕事上の特徴例

○障がいによりできないことがある(例:電話応対、接客など)

○口頭の指示だけだと理解することができない

○一度にたくさんの仕事を支持すると頭が混乱する

○ルール化・マニュアル化されていないことはできない

○月に数回遅刻、早退、欠勤が発生する

○わからないことがあっても質問しないで、そのまま進めてしまう

 

精神障がいの特徴を理解したマネジメントを

 こうした精神障がいの特徴を理解した上でマネジメントすることが重要だと、佐藤氏は指摘する。個々の症状をケアするのではなく精神障がいの特徴を理解し、会社・組織としてマネジメントする体制、仕組み・予防策の構築が大切なのだ。

 そうするとオフィス内にある「不安の素」を取り除いていくことが必要だ。その不安とは以下のようなものが挙げられる。

<仕事に関する不安>

 ・仕事の優先順位がわからない。

 ・誰の指示を聞けば良いのかわからない。

 ・指示が曖昧で「具体的な」作業内容がわからない

 ・作業手順がわかっていない

 ・自分の仕事の成果物が不確か

 ・仕事の期限が不明確、納期に間に合うかどうかわからない

<自分自身に関する不安>

 ・自分の役割やポジションに対する不安

 ・自分の作業能力に対する不安

 ・自分の評価、将来についての不安

 

メンタルの状態を見える化する

 精神障がい者の健康、作業能力、ヒューマンスキルについてそれぞれ5段階のレベルに区分し、状態を観察しながら、今どのレベルにあるのかを判断する。その上で、そのレベルにあった仕事の与え方、指示の仕方を変えているという。

 

精神障がい者の能力が発揮でき、働きやすい職場に

 こうした「オフィスの作業の見える化」「障がい者の状況の見える化」によって、精神障がい者にたいする適切なマネジメントを行うことによって、不安を取り除き(やわらげ)、その能力を発揮できるようにしているという。

 障がい者の雇用は法律の義務付けにより積極的な採用が必要だが、その定着と能力発揮のための仕組みづくり、生きたマネジメントが欠かせない。まずは、現状のオフィスの中の仕事を見直して、「見える化」するところからはじめてみましょう。これはきっと、業務の無駄の発見にもつながり、障がい者に限らず働きやすい職場づくりの第1歩になるはずだ。

 

challenge.persol-group.co.jp

 

働き方改革法案の行方……

国会空転

 現在国会では、森友・加計学園問題財務省の文書改ざんや次官のセクハラ問題、防衛省の日報問題など行政を巡る疑惑や問題の発生で空転している状態です。新聞報道によれば、財務大臣の辞任要求や柳瀬元首相補佐官の証人喚問要求に与党が応じなかったため昨4月20日野党6党が国会審議を欠席し、今後の審議日程も定まっていないということです。政府が今国会の最重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」を審議する衆議院厚生労働委員会は、野党欠席のまま開会、審議を進め野党の質問時間を空費したとのことです。

mainichi.jp

 働き方改革関連法案の内容

 昨年来、「働き方改革」について法案検討や経済界・労働界での議論が活発化し、様々な実験や制度改善も進み始めています。しかし、その根拠となる労働基準法など関連法の成立にはまだまだ時間がかかりそうです。

 今回は、現在の国会に提案されている法案の内容をご紹介します。

提案されている法案(4月6日提案)では、従来の法案に加え中小企業・小規模事業所への配慮が強化されています。以下、主な内容をみていきます。

 

働き方改革の総合的かつ継続的な推進

 働き方改革に係る基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定める。(雇用対策法改正

 

II、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現

 ※2019年4月1日施行/中小企業は2020年4月1日、一部特例あり。

1 労働時間に関する制度の見直し(労働基準法労働安全衛生法

時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する。

(※)自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外がある。研究開発業務について、医師の面接指導を設けた上で、適用除外となる。

・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。(2023年4月1日施行)

・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない。

 →意外と知られていない改正案です。

高度プロフェッショナル制度の創設等を行う。(高度プロフェッショナル制度における健康確保措置を強化)

〜職務の範囲が明確で一定年収以上(少なくとも1000万円以上)を有する労働者が高度な専門知識を活かした業務に従事する場合に、一定の要件を満たしたすことを条件として、労働時間・休日・深夜勤務割増の規定を適用除外とする。

 →野党は長時間労働を促進する制度として反発しており、争点となっています。

 

・労働者の健康確保措置の実効性を確保する観点から、労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければならないこととする。(労働安全衛生法の改正)

 

2 勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)

・事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない。

 →長時間労働を抑えるための新しい考え方です。具体的な時間数については別途指針を作る方向です。

 

産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)

・事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供することとするなど、産業医・産業保健機能の強化を図る。

 

Ⅲ、雇用形態にかかわらない厚生な待遇の確保
 ※2020年4月1日施行/中小企業は2021年4月1日施行

1 不合理な待遇差を解消するための規定の整備
           (パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

・短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の差を設けることを禁止する。

・個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる判断されるべき旨を明確化する。

有期雇用労働者の均等待遇規定を整備する。

派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化する。

・これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備する。

 

2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
             (パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化する。

 

3 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

・1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備する。

 

 詳しくは厚生労働省のWebサイトをご覧ください。↓

www.mhlw.go.jp

厚労省、改革推進に重点

 厚生労働省は関連法の成立を前提に、働き方改革を強力に推進したい考えです。今年度から都道府県労働局に「働き方改革推進支援センター」を設置し、体制を整えようとしています。また、全国社労士会、商工会議所、市町村行政相談センターや金融機関など各団体に協力を求め広報活動を展開していく方針です。

 

セミナー等も2600回、助成金

 事業者向けの働き方改革セミナーは、全国で約2600回開催を計画しています。労働保険事務の年度更新手続きの際に三六協定や就業規則に関する周知・相談体制をとるなど複合的に対応していく方針です。また、中小企業向・小規模事業者向け対策費として約2000億円を計上、時間外労働等改善助成金やキャリアアップ助成金などの助成金約960億円、IT導入助成金にも500億円を計上しています。

 

 

企業もこうした情報提供や助成金もうまく活用して、働き方改革と生産性向上が進んでいくとよいですね。

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定年後の再雇用 大幅な賃金ダウンは不法行為に

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 今日3月31日で定年となり、来週から再雇用され引き続き仕事を頑張る、という方も多いのではないでしょうか。そうした定年を迎えた方にとっても、事業主にとっても気になるニュースが入ってきました。高年齢者の継続雇用制度をめぐる司法判断についてみてみましょう。

 

「九州惣菜事件」判決が確定

 定年後雇用継続制度により再雇用となる際に、業務量の減少を理由に大幅な収入減となるのは許されるのかを争った「九州惣菜事件」の福岡高裁判決(2017年9月7日)が確定しました。最高裁が、3月1日に原告の上告を退けたため、30日に判決が確定したものです。

 

産経新聞 Web3月30日

www.sankei.com

朝日新聞 Web 3月30日

www.asahi.com

 

 この裁判では、九州惣菜の元正社員だった女性が60歳で定年となり再雇用を希望した際に、会社側が提示した労働条件が「月収で4分の1」と大幅な減少となることを不服として再雇用契約を結ばず、「定年前の8割の賃金」での地位確認と再雇用の機会を侵害したことへの逸失利益・慰謝料を求めて訴訟を起こしたものです。

 

提示された労働条件

 会社から提示された労働条件は、次のようなものでした。女性の定年前の月額賃金を時給になおすと1944円でしたが、再雇用条件短時間契約となり時給900円と半分以下となっていました。しかも、会社は業績不振を理由に契約時間の短縮を求めました。これにより、女性の月収ベースでみると定年前の4分の1にまで減額となってしまうというものでした。

 

一審、二審の概要

 福岡地裁小倉支部の一審判決(2016年10月27日)は、業務の範囲は定年前より限定されており、時給900円は他のパート社員と比べても不合理はない、として原告の訴えを棄却しました。

 これに対して福岡高裁の二審では、業務量が減ることで短時間勤務契約となる提案は理解できるが、月収が「75%も減少」することを正当化する合理性は認められないと判断しました。受け入れ難い条件で不法行為であるとして慰謝料の支払いを命じました。逸失利益については、雇用契約が成立しなかったことから認めませんでした。

 

労働組合・全国一般福岡地方本部の記事(フェイスブック

www.facebook.com

 

高年齢雇用確保措置の趣旨

 今回の判決の根拠となっているのは、高年齢者雇用安定法で、第9条で事業主に高年齢者雇用確保措置をとるように義務付けています。これに基づいて企業は継続雇用制度を導入し、希望する労働者を継続雇用しなければなりません。今回の判決では、この継続雇用制度の趣旨について次のように解釈しています。

  • 極めて不合理であって、労働者である高年齢者の希望・期待に著しく反し、到底受け入れ難いような労働条件を提示するのは、継続雇用制度の趣旨に反した違法性がある。
  • 当該労働者が、継続雇用制度の合理的運用によって65歳まで安定して雇用されるという法的保護による利益を侵害する不法行為である。
  • 継続雇用制度は、定年の前後における労働条件の継続性・連続性が一定程度確保されるべきである。
  • 上記の例外的な労働条件が提示されるためには、合理的な理由が必要である。本件はそのような合理的理由を認められない。

 厚労省高年齢雇用確保措置Q&A

www.mhlw.go.jp

継続雇用にあたっての留意点

 上記のように、再雇用後の労働条件を定めるには、労働条件の継続性・連続性について留意する必要があります。再雇用だから、これまでとまったく違う職務を与え、そのことによって給与を大幅に引き下げる、ということもできません。(トヨタ自動車ほか事件/名古屋高裁2016年9月28日)

 したがって、職務や役割を変える/業務量・労働時間を減らす/雇用形態について事前協議をする/月収ベースで極端な減額とならないよう給与水準を確認する、といった点を押さえた条件づくりが求められます。定年となるまでに十分に時間をとって、本人の希望を聞き、条件を提示して話し合って決めるといことが大切だと思います。

 トヨタ自動車ほか事件(名古屋高裁判決)

www.nikkei.com

WinWinの雇用条件でベテランのモチベーションアップを

 再雇用にあたって、業務内容についても一定の継続性を持たせ、知識・経験を生かした働き方をしてもらうことが、経営にとっても有効になると思います。人手不足が叫ばれる中、まだまだ元気な高年齢労働者のモチベーションをアップさせて、業績向上や後進の指導・教育に役割を果たしてもらうことは、企業の将来にとっても価値ある積極策といえるのではないでしょうか。

 

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留学生を雇用する際の留意点について

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  ⭐️留学の本来の目的「勉学・研究」がおろそかにならないように

 

ラーメン「一蘭」社長、書類送検

 昨日(3月6日)の新聞各紙が、大きな見出しで報道しています。容疑は留学生のアルバイト雇用に関する入国管理法違反と雇用対策法違反容疑です。毎日新聞電子版の記事によれば、ラーメン一蘭大阪市内の2店で雇用されていた留学生は550人で、入国管理法で定めれた週あたり実働28時間以内という基準を超える最高で月間164時間も働かせていたということです。留学生の間でも「時給が良い」「長い時間働ける」と”評判”になっていたといいます。違法な雇用が常態化していたものと思われます。

 

mainichi.jp

外国人雇用には制限があります

 「人手不足の折、採用を急ぎたい」「増え続ける外国人観光客への接客対応で日本語も話せる留学生をぜひ採用したい」と留学生の採用ニーズは高まっています。

 しかし、留学生を含む外国人を雇用する場合には、労働基準法などの労働法の適用だけでなく入国管理法などにより雇用規制、労働時間制限があります。採用の際に就労資格などをきちんと確認し、ハローワークへの届け出など適正に処理をしておかないと、違反を問われ罰金や社名公表など大きな痛手を負うことになります。

 

留学生を雇用する場合の留意点

  • 1、まずは、留学生本人にアルバイトすることが「アルバイトの目的は?」「勉学に支障がでないか?」という点をきちんと話し合って、確認しておきましょう。また、留学生だからといって労働条件に差をつける、といったことは許されませんので、労働条件を明記した雇用契約書をきちんと交わしてください。英語表記の契約書または説明書を作成しておくとトラブル防止のためにも良いでしょう。

 

  • 2、「資格外活動許可」を受けている人しか採用できません。採用の際に、必ず資格の確認をしましょう。許可のない人は、たとえどんなに優秀な留学生でも採用してはいけません。

⬇︎入国管理局の解説資料 〜不法就労させると3年以下の懲役・300万円の罰金

http://www.immi-moj.go.jp/seisaku/pdf/2015fuhoushurou.pdf

 

  • 3、採用後、「週あたり28時間」を超えて働かせてはいけません。雇用契約が28時間以内でも、実体として28時間を超えて働かせていれば違法となります。シフト管理や残業などの労働時間管理を”現場”で行うことが重要です。「時間管理は現場の店長に任せていた」といっても悪質であれば経営者が責任を問われます。店長に法規制の意味を理解させ、管理を徹底しておくことが求められます。

⬇️東京労働局のWebサイトから 〜Q3,Q4を参照してください

外国人雇用に関するQ&A | 東京労働局

 

  • 4、上記には例外規定があり、「学校の休業中は1日当たり8時間まで」と緩和されます。夏休み、春休みなどの学校休暇期間については、日程をよく確認した上で就労させてください。

 

  • 5、採用および離職についてハローワークへの届け出が必要です。

 違反すると30万円以下の罰金が科せられます。

⬇️厚生労働省のWebサイトより 〜インターネットでの届け出もできます

www.mhlw.go.jp

 

 以上のような点に留意して違法・不法就労とならないようにしましょう。そして、留学生にとっても安心して働くことができれば、その能力を十分に発揮してくれるでしょう。

 

 

 

 

準備できていますか? ”有期から無期への転換” 

 

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4月より 無期契約への転換ルールスタート 

 改正労働契約法の施行により、4月1日から5年以上契約更新の実績がある有期雇用契約の労働者が無期契約への転換を申し出ることができるようになります。雇用主は拒否することができません。この転換ルールの変更への準備はお済みですか?



無期転換のポイント


1、有期契約労働者で2013年4月以降に通算5年以上契約を更新した労働者は、「無期労 働契約」への転換を申し出ることができます。
2、対象は、パート社員、契約(嘱託)社員など半年や1年間など契約期間を区切って 更新してきた「有期労働契約」を交わしている労働者です。無期労働契約は、多くは 正規社員に適用されています。非正規社員の雇用の安定を図るための政策です。
3、今年4月1日以降に申し出があったら、法律によって「雇用者は承諾したものとみ なす」ことになります。

4、申し出があった時点で契約している有期契約が満了した日の翌日から無期契約に切 り替わります。

 例) 雇用契約期間が 4月1日〜3月31日 の場合

    無期転換への申し出 2018年6月1日

    無期契約への転換日 2019年4月1日

5、無期契約に変わったからといって、時給を上げる、賞与を出すなど労働条件を変更 する必要はありません。労働条件をそのままにして、契約を無期限にする、という対 応で問題ありません。

6、ただし、雇用政策を見直して有期契約労働者とは区分して新しい雇用区分を設け、 労働条件を上げる、といったことは可能です。あるいは、正社員に登用する、という こともありうるでしょう。こうした例では事業主には助成金が支給される場合があり ます。

 例) 有期雇用契約の労働者 パートタイマー  時給制、賞与なし

                 ⬇︎

    無期雇用契約の労働者 正社員  月給制、賞与あり に転換した

    ※賃金が転換前より5%以上改善した場合、キャリアアップ助成金正社員化      コースの受給対象となります。

www.mhlw.go.jp

 

継続雇用の高齢者の特例

  無期転換ルールがスタートすることで、定年後に引き続き雇用される有期雇用労働者(継続雇用、再雇用)についても無期転換申込権が発生します。定年が60歳の月末でありその翌月から1年単位で再雇用契約を結び雇用した場合は、65歳となった月末の翌日から無期転換への申し出をすることが可能となります。

 しかし、高齢者の場合、年齢が高くなるにつれ体力や健康面、業務の適正能力が個人ごとに大きく差が生まれてきます。それなのに無期雇用となると、雇用者に負担が大きくなってしまいます。そこで、都道府県労働局に認定申請し認定を受けることで無期申込が発生しない特例が設けられています。対象となる労働者がいて、特例を受けようとする会社は、早めに労働局への認定申請を行ってください。(申し出がある前に認定を受けておく必要があります。)

 ●対象となる労働者 定年後、同一事業主に引き続き雇用される有期雇用労働者

⬇︎有期特措法パンフレット

http://muki.mhlw.go.jp/point/leaflet.pdf

 

無期転換への対応

 上記の転換ルールが始まる4月までに、以下のような準備をしておくとよいでしょう。年度末を迎え、忙しくてそんな時間はない! という会社は社会保険労務士にご相談ください。

1、有期契約労働者を対象とする就業規則に「無期転換」の条項を加える必要がありま す。必要な変更をして、労働者への周知を行いましょう。労働基準監督署への届出も 必要です。
2、申し出を受けた際の申請用紙の準備、契約書の扱い方のマニュアルも整えておきま しょう。無期契約となった人へは「労働条件通知書」を毎年発行する、など労使双方 がわかりやすい仕組みをつくるなど工夫も大事です。

3、合わせて無期契約となった労働者をこれまでと異なる雇用形態、労働条件で雇用す るような場合は、新しい就業規則や給与規程なども作る必要があります。
4、経営戦略上「人材の安定的な確保」という視点で捉え、対象者に積極的に呼びか  け、無期転換を進めるということもあると思います。


  詳しくは、厚労省の下記のサイトを御覧ください。「無期契約申込書」のひな形などもアップされています。「ハンドブック」もわかりやすく編集されていますので、参考になると思います。
 

muki.mhlw.go.jp

無期転換ルールのことで、ご不明の点があれば、お問い合わせください。

→オフィス赤木 k.akagi@jobsupport.jp

 

つい目をそむけたくなる。  「未来の年表」

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この本は、読まないほうがよいかもしれない……

しかし、知っておかなければならないことが書かれている。

 

「未来の年表ー人口減少に本でこれから起きること」

          (河合雅司著、講談社現代新書2017年)

  著者は大正大学客員教授で専門は人口政策、社会保障政策。内閣官房有識者会議委員や厚労省農水省など政府委員を務めた経験があります。この本は、その専門の立場から、日本の未来について書かれています。2015年国勢調査結果や国立社会保障・人口問題研究所(社人研)のデータをもとに、「人口減少カレンダー」として詳しく解説しています。2017年から2050年までの毎年、そして2065年以降、年ごとに起きる社会的な問題が次々とカレンダーに表れてきます。

例えば

2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる」

「2024年 全国民の3人に1人が65歳以上の『超・高齢社会大国』へ」

2033年 全国の住宅の3戸1戸が空き家になる」

2039年 火葬場が不足」

こんな見出しが並びます。驚きますよね?

 

日本の人口は大幅に減少 国が存立できなくなる?

 日本の人口は2011年から減少局面に入ったと言われていましたが、2015年の国勢調査で実調査結果として確認されました。国政調査が始まって100年、初めて減少に転じたのです。また、2016年の年間出生数が初めて100万人を割りました。おそらく2017年も同様の傾向でしょう。社人研の「日本の将来人口推計」(2017年改訂版)によれば、1億2700万人だった人口は、100年待たずに5000万人ほどに減少してしまうと指摘しています。本書では「こんなに急激に人口が減るのは世界史においても類例がない。われわれは、長い歴史にあって極めて特異な時代をいきているのである」と表現しています。そして、どんどん減り続ける日本人口は、西暦3000年にはなんと2000人になっているというのです。これではもう国としてなりたちません。

 

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/image/n1201060.png

  (出典)総務省国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所   「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月    1日現在人口)、厚生労働省「人口動態統計」

 

静かなる有事

 人口減少により、日本の喫緊の課題として1.出生数の減少 2.高齢者の激増 3.社会の支え手の不足 4.これらが互いに絡み合って起こる人口減少 を挙げています。このことで、国民生活に支障が出てくる。このことを著者は「静かなる有事」とよび、国を挙げた対策に必要性を訴えています。

 

最大の課題「2042年問題」

 様々な困難な課題が出てきますが、著者は、もっとも深刻な課題として「高齢者人口が4000万人とピークになる2042年問題」だと主張しています。政府は人口問題の危機として「団塊の世代がすべて75歳になる2025年問題」を挙げ、これに向けた対策を打とうとしています。なんと、あと7年後に迫っています。しかし、著者は「団塊ジュニア世代が全て高齢者になり、高齢者となる2042年では高齢者が3960万人とピークに達し、福祉課題など表面化します。さらに深刻なのは勤労世代の口が2025年より1250万人も減少するというのです。

いったい日本の社会はどうなってしまうのでしょうか? よぼよぼ日本はどこへ行こうとしているのでしょうか?

 

日本を救う処方箋

 こうした厳然たる事実に基づく推計を前に、今からできることは何か? この本では、政府の進める4つの選択肢(外国人労働者受け入れ、AI活用、女性活躍推進、高齢者活躍)を検証し、いずれも課題が多いと指摘しています。その上で、「日本を救う10の処方箋」を示しています。

【戦略的に縮む】

  ①「高齢者」を削減 ②24時間社会からの脱却 ③非住居エリアを明確化

  ④都道府県を飛び地合併 ⑤国際分業の徹底

【豊かさを維持する】

  ⑥「匠の技」を活用 ⑦国費学生制度で人材育成 

【脱・東京一極集中】

⑧中高年の地方移住推進 ⑨セカンド市民制度を創設

少子化対策

  ⑩第3子以降に1000万円給付

それなりに現実的な対策から、かなり大胆は発想まで含まれています。個別にはコメントしませんが、こうしたこれまでの少子高齢化対策の延長ではなく、データに基づく正しい推計(都合のよい解釈ではなくて……)を根拠に、各方面からの根本的な対策検討が求められていると思います。

bookclub.kodansha.co.jp

 

25年後、あなたは何歳ですか?

その時、どのように働き、どのように暮らしていますか?

そして、誰と誰を支えているでしょうか。

  若い人は若いなりに、高齢者は高齢者なりに、自分自身の暮らし方・働き方を考えて生きる。同時に、家族や社会の中で自分にできる「支え方」で関わっていく。政府の政策実施や社会全体の仕組みを変えていくことも大切です。一方で、国民どうしが支え合う協同社会の実現が求めらていると思います。

 

 

ブラックボックス と #Me Too

 この本を読んで、あなたにも想像してほしい。いつ、どこで、私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ。 

伊藤詩織著「ブラックボックス」(文藝春秋社/2017)の「はじめに」に書かれた言葉です。

 

ブラックボックス

 ジャーナリストである伊藤さんが、就職の相談で会った元TBS記者山口氏にレイプされた事件について、被害者自身がその経過や事後の加害者とのやりとり、警察・検察の動きなどを自らも取材してレポート=告発しています。安倍首相に近いと言われる元記者に対して用意された逮捕状は執行されることなく、直前で逮捕は取りやめとなった。検察の判断も不起訴処分となり、検察審査会に申し立てを行ったことを受けて、伊藤さんは2016年5月、顔を出して記者会見を行いました。マスコミも取り上げたので、この会見について覚えていらっしゃる方も多いと思います。その後、検察審査会が「不起訴相当」の結論を出しました。彼女は、性犯罪のブラックボックスに光をあてるために出版を決意したのです。

books.bunshun.jp

 

性犯罪を裁くまでの厚い壁

 本書では、事件の経過とともに日本の性犯罪が親告罪であること、準強姦罪の立証・立件にいくつもの壁があり被害者にとって大変な苦痛を伴うものであることを、自らの心情と重ねて書き出しています。政治的な背景は別にしても、日本の性犯罪に対応する法整備や行政対応は遅れていると、北欧の例などをひいて指摘しています。スウェーデンでの取材で、365日24時間レイプ被害にあった人を受け入れる「レイプ緊急センター」をもつ総合病院のプライバシーを守る設備上の配慮や検査や治療、カウンセリングを受けられる体制ができていることを紹介しています。日本でもこうした組織・体制づくり、デートレイプドラッグの検査体制の整備が必要であると訴えています。

 

法改正で一歩前進

昨年7月に施行された改正刑法により、(準)強姦罪は「(準)強制性交罪」となり、親告がなくても公訴でき、これまで被害対象は女性に限られていたものが男性への犯罪行為も対象となりました。長年の関係者の努力の成果です。

 

www.sankei.com

 

関連犯罪は増加傾向

1月18日警察庁が発表した2017年の刑法犯件数(速報値)は、全体で91万5千件で前年比8.1%減で戦後最少記録を更新したそうです。しかし、強制性交等は12.3%増で1111件でした。この数字も氷山の一角かもしれません。

 

mainichi.jp

 

これまで表に出にくい性犯罪でしたが、相談・告発がしやすい制度や社会づくり、人々の意識を変えていく必要があります。そのためにも起こった事実を知り向き合う努力が私たちにも求められていると思います。

 

#Me Too

 

職場の忘年会でセクハラにあい、上司に訴えたが、加害者からの謝罪や処罰がないばかりか、訴えた当初は上層部から『そういう事実は確認できませんでした』と、まるでこちらがうそをついているかのように言われた。 

 朝日新聞のフォーラム「『#METOO』どう考える?」のデジタルアンケートに寄せられた40代女性の声です。

 昨年アメリカ・ハリウッドで有名プロデューサーによるセクハラを女性たちが告発したこときっかけに、「MeToo(私も)」と次々に告発が起きました。SNSで拡散するため#(ハッシュタグ)をつけて発信したことから全世界に広がるムーブメントとなりました。日本でも、こうした動きが広まっています。これらは、社会的意識を変えていくことにつながっていくかもしれません。

www.asahi.com

 

こうしたセクハラや性犯罪を起こさない、起こさせないためには、互いを人間として尊重し合う人間性を持つことと、社会の規範を作っていくことが大事だと思います。

さいごに、伊藤さんからのメッセージをご紹介します。

 

「今まで想像もできなかった苦しみを知り、また想像以上に多くの人の心の中に存在していることを知った。同じ体験をした方、目の前で苦しむ大切な人を支えている方に、あなたは一人ではないと伝えたい」 (あとがきから)