準備できていますか? ”有期から無期への転換”
4月より 無期契約への転換ルールスタート
改正労働契約法の施行により、4月1日から5年以上契約更新の実績がある有期雇用契約の労働者が無期契約への転換を申し出ることができるようになります。雇用主は拒否することができません。この転換ルールの変更への準備はお済みですか?
無期転換のポイント
1、有期契約労働者で2013年4月以降に通算5年以上契約を更新した労働者は、「無期労 働契約」への転換を申し出ることができます。
2、対象は、パート社員、契約(嘱託)社員など半年や1年間など契約期間を区切って 更新してきた「有期労働契約」を交わしている労働者です。無期労働契約は、多くは 正規社員に適用されています。非正規社員の雇用の安定を図るための政策です。
3、今年4月1日以降に申し出があったら、法律によって「雇用者は承諾したものとみ なす」ことになります。
4、申し出があった時点で契約している有期契約が満了した日の翌日から無期契約に切 り替わります。
例) 雇用契約期間が 4月1日〜3月31日 の場合
無期転換への申し出 2018年6月1日
無期契約への転換日 2019年4月1日
5、無期契約に変わったからといって、時給を上げる、賞与を出すなど労働条件を変更 する必要はありません。労働条件をそのままにして、契約を無期限にする、という対 応で問題ありません。
6、ただし、雇用政策を見直して有期契約労働者とは区分して新しい雇用区分を設け、 労働条件を上げる、といったことは可能です。あるいは、正社員に登用する、という こともありうるでしょう。こうした例では事業主には助成金が支給される場合があり ます。
例) 有期雇用契約の労働者 パートタイマー 時給制、賞与なし
⬇︎
無期雇用契約の労働者 正社員 月給制、賞与あり に転換した
※賃金が転換前より5%以上改善した場合、キャリアアップ助成金正社員化 コースの受給対象となります。
継続雇用の高齢者の特例
無期転換ルールがスタートすることで、定年後に引き続き雇用される有期雇用労働者(継続雇用、再雇用)についても無期転換申込権が発生します。定年が60歳の月末でありその翌月から1年単位で再雇用契約を結び雇用した場合は、65歳となった月末の翌日から無期転換への申し出をすることが可能となります。
しかし、高齢者の場合、年齢が高くなるにつれ体力や健康面、業務の適正能力が個人ごとに大きく差が生まれてきます。それなのに無期雇用となると、雇用者に負担が大きくなってしまいます。そこで、都道府県労働局に認定申請し認定を受けることで無期申込が発生しない特例が設けられています。対象となる労働者がいて、特例を受けようとする会社は、早めに労働局への認定申請を行ってください。(申し出がある前に認定を受けておく必要があります。)
●対象となる労働者 定年後、同一事業主に引き続き雇用される有期雇用労働者
⬇︎有期特措法パンフレット
http://muki.mhlw.go.jp/point/leaflet.pdf
無期転換への対応
上記の転換ルールが始まる4月までに、以下のような準備をしておくとよいでしょう。年度末を迎え、忙しくてそんな時間はない! という会社は社会保険労務士にご相談ください。
1、有期契約労働者を対象とする就業規則に「無期転換」の条項を加える必要がありま す。必要な変更をして、労働者への周知を行いましょう。労働基準監督署への届出も 必要です。
2、申し出を受けた際の申請用紙の準備、契約書の扱い方のマニュアルも整えておきま しょう。無期契約となった人へは「労働条件通知書」を毎年発行する、など労使双方 がわかりやすい仕組みをつくるなど工夫も大事です。
3、合わせて無期契約となった労働者をこれまでと異なる雇用形態、労働条件で雇用す るような場合は、新しい就業規則や給与規程なども作る必要があります。
4、経営戦略上「人材の安定的な確保」という視点で捉え、対象者に積極的に呼びか け、無期転換を進めるということもあると思います。
詳しくは、厚労省の下記のサイトを御覧ください。「無期契約申込書」のひな形などもアップされています。「ハンドブック」もわかりやすく編集されていますので、参考になると思います。
無期転換ルールのことで、ご不明の点があれば、お問い合わせください。
→オフィス赤木 k.akagi@jobsupport.jp
つい目をそむけたくなる。 「未来の年表」
この本は、読まないほうがよいかもしれない……
しかし、知っておかなければならないことが書かれている。
「未来の年表ー人口減少に本でこれから起きること」
(河合雅司著、講談社現代新書2017年)
著者は大正大学客員教授で専門は人口政策、社会保障政策。内閣官房有識者会議委員や厚労省、農水省など政府委員を務めた経験があります。この本は、その専門の立場から、日本の未来について書かれています。2015年国勢調査結果や国立社会保障・人口問題研究所(社人研)のデータをもとに、「人口減少カレンダー」として詳しく解説しています。2017年から2050年までの毎年、そして2065年以降、年ごとに起きる社会的な問題が次々とカレンダーに表れてきます。
例えば
「2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる」
「2024年 全国民の3人に1人が65歳以上の『超・高齢社会大国』へ」
「2033年 全国の住宅の3戸1戸が空き家になる」
「2039年 火葬場が不足」
こんな見出しが並びます。驚きますよね?
日本の人口は大幅に減少 国が存立できなくなる?
日本の人口は2011年から減少局面に入ったと言われていましたが、2015年の国勢調査で実調査結果として確認されました。国政調査が始まって100年、初めて減少に転じたのです。また、2016年の年間出生数が初めて100万人を割りました。おそらく2017年も同様の傾向でしょう。社人研の「日本の将来人口推計」(2017年改訂版)によれば、1億2700万人だった人口は、100年待たずに5000万人ほどに減少してしまうと指摘しています。本書では「こんなに急激に人口が減るのは世界史においても類例がない。われわれは、長い歴史にあって極めて特異な時代をいきているのである」と表現しています。そして、どんどん減り続ける日本人口は、西暦3000年にはなんと2000人になっているというのです。これではもう国としてなりたちません。
(出典)総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月 1日現在人口)、厚生労働省「人口動態統計」
静かなる有事
人口減少により、日本の喫緊の課題として1.出生数の減少 2.高齢者の激増 3.社会の支え手の不足 4.これらが互いに絡み合って起こる人口減少 を挙げています。このことで、国民生活に支障が出てくる。このことを著者は「静かなる有事」とよび、国を挙げた対策に必要性を訴えています。
最大の課題「2042年問題」
様々な困難な課題が出てきますが、著者は、もっとも深刻な課題として「高齢者人口が4000万人とピークになる2042年問題」だと主張しています。政府は人口問題の危機として「団塊の世代がすべて75歳になる2025年問題」を挙げ、これに向けた対策を打とうとしています。なんと、あと7年後に迫っています。しかし、著者は「団塊ジュニア世代が全て高齢者になり、高齢者となる2042年では高齢者が3960万人とピークに達し、福祉課題など表面化します。さらに深刻なのは勤労世代の口が2025年より1250万人も減少するというのです。
いったい日本の社会はどうなってしまうのでしょうか? よぼよぼ日本はどこへ行こうとしているのでしょうか?
日本を救う処方箋
こうした厳然たる事実に基づく推計を前に、今からできることは何か? この本では、政府の進める4つの選択肢(外国人労働者受け入れ、AI活用、女性活躍推進、高齢者活躍)を検証し、いずれも課題が多いと指摘しています。その上で、「日本を救う10の処方箋」を示しています。
【戦略的に縮む】
①「高齢者」を削減 ②24時間社会からの脱却 ③非住居エリアを明確化
④都道府県を飛び地合併 ⑤国際分業の徹底
【豊かさを維持する】
⑥「匠の技」を活用 ⑦国費学生制度で人材育成
【脱・東京一極集中】
⑧中高年の地方移住推進 ⑨セカンド市民制度を創設
【少子化対策】
⑩第3子以降に1000万円給付
それなりに現実的な対策から、かなり大胆は発想まで含まれています。個別にはコメントしませんが、こうしたこれまでの少子高齢化対策の延長ではなく、データに基づく正しい推計(都合のよい解釈ではなくて……)を根拠に、各方面からの根本的な対策検討が求められていると思います。
25年後、あなたは何歳ですか?
その時、どのように働き、どのように暮らしていますか?
そして、誰と誰を支えているでしょうか。
若い人は若いなりに、高齢者は高齢者なりに、自分自身の暮らし方・働き方を考えて生きる。同時に、家族や社会の中で自分にできる「支え方」で関わっていく。政府の政策実施や社会全体の仕組みを変えていくことも大切です。一方で、国民どうしが支え合う協同社会の実現が求めらていると思います。
ブラックボックス と #Me Too
この本を読んで、あなたにも想像してほしい。いつ、どこで、私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ。
伊藤詩織著「ブラックボックス」(文藝春秋社/2017)の「はじめに」に書かれた言葉です。
ブラックボックス
ジャーナリストである伊藤さんが、就職の相談で会った元TBS記者山口氏にレイプされた事件について、被害者自身がその経過や事後の加害者とのやりとり、警察・検察の動きなどを自らも取材してレポート=告発しています。安倍首相に近いと言われる元記者に対して用意された逮捕状は執行されることなく、直前で逮捕は取りやめとなった。検察の判断も不起訴処分となり、検察審査会に申し立てを行ったことを受けて、伊藤さんは2016年5月、顔を出して記者会見を行いました。マスコミも取り上げたので、この会見について覚えていらっしゃる方も多いと思います。その後、検察審査会が「不起訴相当」の結論を出しました。彼女は、性犯罪のブラックボックスに光をあてるために出版を決意したのです。
性犯罪を裁くまでの厚い壁
本書では、事件の経過とともに日本の性犯罪が親告罪であること、準強姦罪の立証・立件にいくつもの壁があり被害者にとって大変な苦痛を伴うものであることを、自らの心情と重ねて書き出しています。政治的な背景は別にしても、日本の性犯罪に対応する法整備や行政対応は遅れていると、北欧の例などをひいて指摘しています。スウェーデンでの取材で、365日24時間レイプ被害にあった人を受け入れる「レイプ緊急センター」をもつ総合病院のプライバシーを守る設備上の配慮や検査や治療、カウンセリングを受けられる体制ができていることを紹介しています。日本でもこうした組織・体制づくり、デートレイプドラッグの検査体制の整備が必要であると訴えています。
法改正で一歩前進
昨年7月に施行された改正刑法により、(準)強姦罪は「(準)強制性交罪」となり、親告がなくても公訴でき、これまで被害対象は女性に限られていたものが男性への犯罪行為も対象となりました。長年の関係者の努力の成果です。
関連犯罪は増加傾向
1月18日警察庁が発表した2017年の刑法犯件数(速報値)は、全体で91万5千件で前年比8.1%減で戦後最少記録を更新したそうです。しかし、強制性交等は12.3%増で1111件でした。この数字も氷山の一角かもしれません。
これまで表に出にくい性犯罪でしたが、相談・告発がしやすい制度や社会づくり、人々の意識を変えていく必要があります。そのためにも起こった事実を知り向き合う努力が私たちにも求められていると思います。
#Me Too
職場の忘年会でセクハラにあい、上司に訴えたが、加害者からの謝罪や処罰がないばかりか、訴えた当初は上層部から『そういう事実は確認できませんでした』と、まるでこちらがうそをついているかのように言われた。
朝日新聞のフォーラム「『#METOO』どう考える?」のデジタルアンケートに寄せられた40代女性の声です。
昨年アメリカ・ハリウッドで有名プロデューサーによるセクハラを女性たちが告発したこときっかけに、「MeToo(私も)」と次々に告発が起きました。SNSで拡散するため#(ハッシュタグ)をつけて発信したことから全世界に広がるムーブメントとなりました。日本でも、こうした動きが広まっています。これらは、社会的意識を変えていくことにつながっていくかもしれません。
こうしたセクハラや性犯罪を起こさない、起こさせないためには、互いを人間として尊重し合う人間性を持つことと、社会の規範を作っていくことが大事だと思います。
さいごに、伊藤さんからのメッセージをご紹介します。
「今まで想像もできなかった苦しみを知り、また想像以上に多くの人の心の中に存在していることを知った。同じ体験をした方、目の前で苦しむ大切な人を支えている方に、あなたは一人ではないと伝えたい」 (あとがきから)
障害者雇用促進法の改正実施について −2018労働行政の話題(2)-
前回、2018年の労働行政の話題としていくつか紹介しましたが、補足情報です。
4月から障害者雇用率が引き上げられます
本日(2018年1月10日)の日経新聞に「精神障害者の雇用義務化、企業の48%『知らない』」の記事がありました。障害者雇用促進法により企業や行政団体には一定比率の障害者雇用が義務付けられています。民間企業では、現在雇用率2%となっています。つまり従業員50人のうち1人は障害者を雇用し、雇用できないのであれば障害者雇用納付金を負担しなさいという制度です。
この障害者雇用率が法改正(平成25年)によって今年の4月から2.2%に、来年(2019年)4月からは2.3%に引き上げられます。
精神障害者も雇用義務の対象に
この引き上げと合わせて対象となる障害者について変更があります。これまでは身体障害者と知的障害者を対象としていましたが、新たに精神障害者もその対象となります。精神障害者は、統合失調症、気分障害などを含みます。企業で採用する際に、身体障害者・知的障害者と精神障害者を合わせて障害者雇用率を満たしていればよい、ということになります。
平成25年改正の内容
また、同じ改正で「障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務」、「苦情処理・紛争解決援助について」も明示されました。募集採用・賃金、教育訓練や福利厚生状の差別の禁止。障害者が働きやすい環境整備への配慮を求めています。また、労働者から苦情の申し出があった際には自主的に解決できるよう相談体制の整備も求めています。
■平成25年改正の内容(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000121387.pdf
ダイバーシティ経営の視点から
多様な働き方を認めることでよりクリエイティブな仕事、業績をめざすダイバーシティ経営を志向する企業も増えています。今いちど御社の雇用、障害者雇用のあり方を見直してみてはいかがでしょう。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/entry/pdf/h27betten.pdf
2018年の労働行政の話題
新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
2018年1月
オフィス赤木 赤木一成
さて、2018年は労働行政にとって大きな変化とその準備の年になりそうです。今年予定されている労働法・労働行政にかかわる大きな話題についてご紹介します。
有期契約から無期契約への転換
2013年4月に施行された改正労働契約法で定められた無期転換ルールがありますが、この4月にその権利が発生する5年を迎えます。それまで契約更新を繰り返し通算5年以上雇用された人が無期契約への転換を希望すれば企業は無期雇用に転換しなければならなくなります。非正規労働者の雇用安定をめざす趣旨ですが、企業によっては「雇用安定のため積極的に転換する」or「契約更新の上限を設け、雇用の流動性を確保する」など対応は分かれそうです。就業規則や契約関係書類の変更など実務上の整備も必要となりますので、まだ準備できていない会社は急ぎましょう。
正規社員が定年を迎え再雇用となり5年を超えた場合に無期転換の例外を認める特例措置もあります。これについては、労働局に対して「第二種計画認定・変更申請」が必要となります。
⬇️ 詳しくは、厚労省無期転換サイトをご覧ください。
派遣労働者の雇用安定化ルール
改正労働者派遣法の施行から3年が経過する9月30日以降に適用されるルールです。有期雇用の派遣社員が同じ職場で働ける期間を3年とし、同じ部署への派遣期間が3年を超えると原則、派遣先企業での直接雇用への切り替えなどが必要になります。適用が厳格化しますので、派遣を受け入れて3年目に入った派遣労働者がいる場合は、その人を自社で雇用するのか派遣契約をやめるのか判断が迫られます。しっかりと仕事ぶりを評価して、早めに判断をしてください。
働き方改革関連法案
昨年の3月に政府が決定した「働き方改革実行計画」に示された労働基準法など関連法案の審議は、昨年の総選挙があったため新年に持ち越されました。直近の通常国会で審議される見通しです。その内容について、昨年9月の労働政策審議会は「おおむね妥当」という答申を出しています。
主な内容は
①長時間労働対策として、残業時間に年720時間などの上限を厳しくし、違反した場合には企業に罰則もあります。
②仕事が同じなら賃金も同じにする「同一労働同一賃金」を法制化します。
③労働時間でなく成果に対し賃金を払う「脱時間給」制度を創設します。国会では、脱時間給を巡り、野党の中には「残業代ゼロ法案」だとして反発する声があり審議の争点となりそうです。
これら関連法案は、当初は2019年4月施行の予定でしたが、審議がずれたため後にずれる可能性はあります。いずれにしても大きな法改正として進められていきます。
⬇️「働き方改革実行計画」の概要はこちらをご覧ください。
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/05.pdf
最低賃金の引き上げ、春闘の動向
最低賃金については、働き方改革実行計画の中でも「毎年3%」程度の引き上げ目標を掲げています。昨年も全国加重平均で25円の引き上げとなりました。今年も同水準の引き上げが予想されます。また、戦後最長の好景気に迫る景気回復基調とデフレ脱却を図る政策推進を受けて、今年の春闘は「3%賃上げ」が目安となりそうです。政府からも、労働界からもそうした意見が出ており、経済界も前向きに対応するようです。さて、賃上げが消費につながり物価を押し上げることにつながるかどうか……。
そのほかの労働行政課題
この他にも、次のような課題があり、関連する行政、経済界、労働界での動きが活発化しそうです。詳細は別途ご紹介していきます。
女性活躍推進・両立支援
長時間労働対策、「過労死ゼロ」緊急対策
テレワークの指針決定
兼業・副業の解禁、転職促進の指針づくり
人生100年時代の働き方、リカレント教育
自分のキャリアを自分で設計〜セルフキャリアドック制度の推進
などなど。
このリーディングは生き方を変える 〜Life Shit を読んでみよう
「わたし、この本に書いてあることはすでに実践しているわ。途中までだけど読んで見て、そのことが正しかったと思えたの。」
とあるリーディングセミナーでカラービジネスコンサルタントが仕事という女性Tさんは、自己紹介でそう言った。なんとも自信に満ちた態度で、圧倒されそうだ。
LIFE SHIT を読む
今回のセミナーで取り上げた本は、
「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略-」
(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著 池村千秋訳
/東洋経済新報社)
400ページにおよぶ専門書だ。
本を読むのは好きだが、遅読の私には、こうした本は苦手である。大概途中で嫌になって放り出すか、とてつもない時間をかけて読むので途中で内容を忘れてしまう。この本一冊読む時間があれば、池井戸潤の作品なら5冊は読めたのに、と後悔することになる。
それでも読んでみようと思ったのは、あちこちの書店に平積みされていて新聞の書評にも度々取り上げられたのを知っていたからだ。もう一つの理由は、来年60歳を迎えることで、第2の人生を意識し始めた、これから残された人生をどう生きたらよいか、などと珍しくまじめに考え始めてきたからだ。
そんな時、フェイスブックでこの本を取り上げたリーディングセミナーのイベント告知が流れてきた。
とあるリーディングセミナー
京町家の8畳ほどの和室に集まってきたのは、6人。キャリアカウンセラー、研修講師、カラービジネスコンサルタント、起業家、私、それにセミナーファシリテーター。テーブルの上には京銘菓や飴が置かれ、リラックスした雰囲気だ。女性が多かったこともあってワイワイと雑談から始まった、ゆるい感じ。
「まず本をざっと見て、目次や中の見出しを見て、中身に入り込むと時間がかかりますかね。ざっとでいいですよ」
えっ、本を読まないの? 眺めるだけ? それで大丈夫なの? とたくさんの疑問符が湧いてきた。このリーディング法は初めてという人ばかりだったので、皆ちょっと不思議そうな顔をしていたが、とにかくやってみた。分厚い本を開き、ペラペラしたり、覗き込んだり。
著者に質問を出す
「そして、この著者に質問を出しましょう。カード1枚に1問、3つの質問を考えてください」
「人生に戦略なんているんですか?」
これがキャリアカウンセラー・Iさんから著者への質問だった。
みんなの質問を紹介しあった後で、各自、その質問の答えとなるキィワードを本の中から探す。この時間がこのセミナーの中ではもっとも長い時間だったが、それでも30分もしない。しかし、皆集中して答え探しをしている。
「長生きするってことは、それだけお金も必要ですね、当たり前だけど。収入のことも考えなくては。なんとなく生きている訳に行かないですね。だから積極的な戦略が必要なんだと気づきました」とIさん。
「リ・クリエーション」という言葉
「人生100年時代というが、85歳まで働くとして、そこまで健康が維持できるのだろうか?」 これは私の問い。
このテーマで本をあちこち開いてみると、次のようなキィワードが出てきた。
健康である期間は長くなる
健康改善のイノベーションが起こる
バランスのとれた生活
脳は鍛えられる
そしてあちこちに出てくる次の言葉も関連するキィワードだと思う。
レクレーションではなく、リ・クリエーション(自己再生)
自己再生の友人関係
うーむ、「リ・クリエーション」か。なんだか心地よい言葉だ。
「この本に書かれていることを実践しています。男女の役割チェンジのことが書かれているけれど、わたしはすでに準備しているんです。夫には定年後は好きなことをしてもらう。これまで働きづめでしたいことができなかったのだから。わたしが稼ぐ、というつもりで準備してきて、起業しました。今、わたしは働くことが楽しくて仕方がない。LIFE SHIFT してますよ〜!」
Tさんは相変わらず明るく元気な感想を述べた。聞いていたみんなも元気をもらった。
雑談さえも学びの場に
セミナー後の雑談時間、ワイワイと和やかにいろんなお話をした。
実はこの雑談の時間もこのリーディングセミナーの貴重な要素なのだそうだ。一つの本をみんなで読んで、出されたキィワードや意見の違いを知ることによって、本の理解がさらに深まる。その読後感を持ってさらに雑談する中で、互いに持っている想いやリソースの交流をすることで満足感が高まるのだ。
「それでは、最後に今日のリーディングを受けて、明日から何を始めるのか、お一人ずつ発表してください」
手応えを感じたのか、ファシリテーターの表情も明るい。
私は、この本を最後まで読み通すこと、これからも自分への教育投資を継続すること、そして本を読む前に「問い」を立てることを決意表明した。
人生100年時代はもう始まっている
本当に密度の濃い3時間半で、「余生」への考えが前向きになった。
人生100年時代、この本から得た知識と今日の経験を我が身に生かそう、楽しもうと思った。そうなると、これからますます忙しい。ボケているヒマなんてなさそうだ。
本は対話するように読むのが良い。できればリーディング仲間とともに。
このリーディングは、人生を変えるかもしれない。
リンク
●リード・フォー・アクション
●LIFE SHIFT
https://store.toyokeizai.net/books/9784492533871/
仕事のムダをなくす 改革の目のつけどころ
「年末年始はゆっくり休んで
仕事のモチベーション向上を図る」
飲食、小売業界で正月休業の動きが広がる中、大和ハウス工業が11月下旬、2018年の正月三が日の住宅展示場および分譲住宅での営業を取りやめ、一斉休業することを発表した。 (2014.12.4. niftyニュース)
広がる営業・サービス見直しの動き
前回の記事「行き過ぎたサービスは、働き方改革のブレーキになる?!」でファミリーレストラン「ロイヤル」やコンビニエンスストアの営業日・営業時間の見直しが始まっていると紹介しました。ダイワハウス工業の正月三が日休業は、こうした動きの一つで、ソフトバンクなどサービス業にも広がっています。
働き方改革を進めて、厳しい採用情勢の下で大学生などの求職者に「働きやすい職場ですよ」とアピールする狙いもあるでしょう。しかし、実際に需要の少ない日、時間の休業は、経営の効率化にもなり、休むことで従業員の休息、モチベーションアップにつながることは間違いないでしょう。
商品やサービスを見直す 本当にそこまで必要なの?
みなさんは、自社や他社の商品・サービスで「ここまでしないといけないのか?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
ヤマト運輸が引き受け荷物の削減に取り組み、職員の昼食時間の確保や長時間労働をなくすため配達時間帯を見直したのはつい最近の話です。私もネットショッピングなどでヤマトさんにはお世話になっていますが、時間枠の変更でなにか不都合があったかというと、何もありませんでした。むしろこちらもその時間は安心してランチがとれるようになりました。(笑)
ビジネスホテルなどでトイレットペーパーの「最後まで使い切ることのご理解のお願い」と言った表示は、今では当たり前になりました。以前は、ロールの厚さが半分くらいになったら新しいものと取り替えていました。労力もコストもムダになっていたものを見直し、顧客に理解・協力を求めました。中には不満を持ったからもあるかもしれませんが、多くの宿泊客に違和感はなかったのではないでしょうか。
競合関係もあるので、サービスの見直しにはバランスは必要ですが、顧客の理解や協力が得られないかを吟味し、可能な部分は思い切って変更します。
会議・意思決定〜そもそも必要な会議か?
「約30,000時間・・・あなたが一生涯で会議に費やす時間だ。
この途方も無い時間、想像してみたことはあるだろうか?1日10時間活動できるとして、365日休みなく働いたら約8年分になる。大事なことなのでもう一度言う、"貴重な人生の時間を、8年分も会議に捧げる"ことになる。」
「世界でいちばんやさしい会議の教科書」(日経BP社2015年)の著者・榊巻亮さんは、自身のブログの中でこう指摘し、改革を呼びかけています。
あなたの会は、会議に年間で何時間を使っていますか?
会議や意思決定について見直し、大胆に改革しましょう。
1、意思決定のルールを作る
・経費の決済や企画、プロジェクトの実施、商品開発、取引先の決定など分野ごと、
段階ごとに決済基準を決める。
・基準を明確に、手続きを簡素化しする。
・ルール決定の際に、仕事の分担と合わせて権限委譲が進みやすいように工夫する。
2、会議を変える
・まず「その会議は本当に必要なのか?」と一つ一つ見直す
会議ごとの目的をはっきりさせて、必要がない場合は廃止してみましょう。
・必要な会議の運営を見直す。
前出の榊巻さんは「7つの基本動作」として下記を提唱しています。
①決まったこと、やるべきことを確認する
②会議の終了条件を確認する
③時間配分を確認する
④主張を引き出す
⑤対話を促す
⑥議論を可視化する
⑦4つのPを押さえて会議をシミュレーションする
時間、議題、出席対象者は適切か? 提出する資料の量と質や完成度は行き過ぎていないか? 最近では、「会議は立ってする」「資料はA4で1枚に限る」「出席者を絞る」と言った改革を断行して成果を挙げている企業がどんどん出てきています。社内会議資料の完成度を高める時間があれば、お客様への提案資料の充実に時間を割いた方が効率的ですよね。
3、コミュニケーションの仕方を変える
浮いた会議の時間を有効に使って、上司・マネージャーは部下とのコミュニケーションを充実させていきましょう。「報・連・相」が重要と言いますが、必要以上に細かく報告させたり、相談に来ないと怒っているのも時間の無駄です。部下の仕事の状況をみながら、上司からタイミングよく声をかけていけば効率的なコミュニケーションが取れると思います。こうした関係づくりは、ハラスメントやメンタルヘルス不全の防止にもつながっていきます。
仕事の進め方・作業を改革する
前回ご紹介した同志社大学・太田肇さんの「ムダな仕事の多い職場」の中では、ホワイトカラー職場の「カイゼン」は形式化して返ってムダのもとになっていると指摘しています。ムダをなくし生産性を上げるためには、改善ではなく改革が必要だと主張しています。
AIやIoT(全てがネットにつながる技術)を活用した大胆な作業改革、組織のありかた、マネジメント手法の改革も必要でしょう。
GUや一部のスーパーではセルフレジが導入され、広がりを見せています。私もGUセルフレジを利用したましたが、商品を所定の台に置くだけで計算ができ精算終了、大変便利です。セルフレジへの誘導と操作説明をする一人の職員が4〜5台のレジを担当していました。ファーストリティリングはこの方式をユニクロにも広げていく方針です。またフレスコなど一部スーパーでは、精算部分だけが無人化されています。1台の有人レジに3台の精算機がついていますので、レジ通過スピードが早くなっています。感覚ですが、これまでの1.5倍くらいのスピードではないでしょうか? 自動精算機なので、閉店後の精算作業も効率化され、誤差も出ません。こうした最新技術を駆使した効率化は加速度的に進むでしょう。
こうした最新技術の導入だけでなく、作業一つ一つを見直し、だれでも理解できるマニュアルに整備する、といった基本的なこともムダを省く近道です。
さあ、あなたの会社・職場を見直してみましょう。