「四方よし」のお手伝い

社長さんと社員さんが共にWinWinの関係となる。近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)と重ね、「四方よし」の関係づくりのお手伝いをしたいと考えています。このブログが何かの参考になれば幸いです。なお、記事の法令等に関わる記述は、執筆当時に施行または施行予定だった内容で、その後の改正に対応してない場合がありますのでご了承ください。

働き方改革を考える 労働時間の適正把握のためのガイドラインを策定(厚労省)

 働き方改革議論が進む中で、過重労働(長時間労働)について法律の改正(労働時間の上限規制と罰則化)を含む対策が進められようとしています。日本は、先進国の中でももっとも過重労働が問題視されていますが、いよいよ上限規制などに踏み出すことになりそうです。企業業績や労働者の仕事の成果や働きがいは、働く人の心身の健康があってこそのものです。この春の政労使合意の下、残業時間が「一月100時間以上にならないこと、2、3、4、5、6ヶ月の各平均が80時間を超えないこと」が確認され、これに沿って法制化される予定です。早ければ今秋の臨時国会に法案が出されます。

 では、この労働時間は「適正に把握」されているのでしょうか?

 この間、厚生労働省は「過重労働撲滅特別対策班」(通称:かとく)を東京労働局と大阪労働局に設置し、重大な違反事例(労働基準法や三六協定違反)の摘発を行い、悪質を見られた企業は企業名公表を行なっています。その事例の中に「労働時間を適正に把握していなかった」事例もたくさんあります。残業時間を正しく申請しづらい職場の雰囲気や上司の対応によりサービス残業を強いられるケースもあります。電通の新入社員・高橋まつりさんの過労自死事件でも、タイムカードを打った後に仕事を続けていたという事実も明らかになっています。ヤマト運輸の巨額の残業代未払い事件(現在もまだ対応が継続中です)も世間の注目を集めたところです。

 こうした違法な長時間労働を許さないため、厚生労働省は、本年1月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下、ガイドラインと言います。)を策定し、公表しました。詳しくは、下記厚生労働省のWebサイトをご覧ください。ガイドラインでは、労働時間を適正に把握するために、労働時間の考え方、適正把握のために使用者がしなかればならないことなどを具体的に示しています。

<労働時間の例>

 ・使用者の指示による業務に必要な準備行為(制服着用が義務付けられた事業場での着替えの時間など)

 ・指示があった時に即時業務に従事できる待機時間

 ・業務上参加が義務付けられた研修・学習時間

 <使用者が講ずべき措置の例>

 ・労働時間の記録〜タイムカード、ICカードパソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を確認し適正の記録すること。

 ・自己申告制の場合の措置〜労働者に適正に申告するよう十分な説明を行うこと

 ・自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間に合致しているか否かを必要に応じて調べて、正しく補正すること。

   例:自己申告よりPCの使用終了時刻が15分遅い。→実態を確認し補正をする。

 ・申告できる時間数を制限する、認めないなど適正な申告を阻害してはならない

 

 今後、事業所はこのガイドラインに基づいて指導されることになります。「自己申告制だから大丈夫。」ということも言えなくなってきます。もう一度現状を見直して見てはいかがでしょう。労働時間について、労使共に正しく認識をもち、「正確に把握できる状況」を作った上で、長時間労働をなくす、仕事の効率化を進める課題や目標を明らかにしていく取り組みを始めていきませんか?

 

⭐️「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

   https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/pdf/guidelines.pdf

働き方改革を考える 「マミートラックの罠」

 働き方改革を進める上で幾つかのテーマがありますが、「女性活躍推進」と「長時間労働対策」はもっとも大きなテーマです。この二つ、実は密接に繋がっています。長時間労働(時間外労働が前提となるような仕事のあり様、仕事の仕方)が女性の(実は男性も)活躍を阻んでいるのです。女性が出産・育休から復帰した際に、子育てのために残業することが難しい。残業を前提としたフルタイム勤務は避けたい、だから育児時短制度を利用する、という人が少なくないのです。育児時短制度を数年利用しているうちに陥ってしまうのが「マミートラック」です。キャリアが階段状にアップしていく制度とすると、育児時短を利用するワーキンブ・ママたちは、キャリアアップに繋がる仕事を任されることがなく、陸上競技場のトラックをくるくると回っているようなキャリアになってしまう、というものです。

 このことで能力のある女性職員がやる気を無くしてしまったのでは、企業にとっても大きな損失となります。逆にマミートラックを嫌って、結婚や出産に躊躇する女性もいます。私の関わったプロジェクトでも30代前半の女性から「マミートラックはとても不安で、決断できませんでした。」という話を聞きました。仕事がだんだん面白くなって来た時に、出産・育児でキャリアが中断してしまう、どちらを取るべきか、と深く悩んでいる女性は少なくないのでは。

 こうしたマミートラックに対して、きちんと取り組む企業が広がっています。長時間労働をなくす仕組み作り、育児時短中でも責任ある仕事を任せてキャリアアップを中断させない支援策など。ご紹介する日経の記事にわかりやすい解説、事例が紹介されているのでお読みください。

 大きな企業だからできる、ということでなく小さな企業でもちょっとした工夫をして、女性が能力に応じて活躍できる(つまり、男性も大いに活躍できる)組織にしていきましょう。

 

style.nikkei.com

働き方改革を考える上で必読の本「資生堂インパクト」

 2017年3月、政府の働き方改革実現会議の最終報告がまとまりました。半年間の議論でよくここまでまとめたなあと感心するくらいの分量と多岐にわたる内容です。
これに合わせて、ということでもないですが、各企業でも働き方を変えよう、働かせ方を変えなくては、という議論が進みだしています。27年ぶりに料金改定を行ったヤマト運輸も、未払い残業代問題の解決、過重長時間労働の解消による働き手の確保が大きな課題でした。
 働き方改革にはたくさんのテーマがありますが、そのうち「女性活躍推進」も大きなテーマです。これを考える上で、ぜひ読んでいただきたいのが「資生堂インパクト」です。1990年代から法律の基準を上回る女性向けの諸施策、育児と仕事の両立支援の施策を次々を実施してきた資生堂が、2015年に大胆な女性活躍推進策を打ちました。育児時短勤務していたビューティー・コンサルタント(BC)職員に対し、「可能な日は遅番や土日勤務を」と提起したのです。マスコミの報道もあって、一時「女性に優しい会社ではなかったのか!」といった批判の声が寄せられ、「資生堂ショック」と言われる現象が起きました。本書は、その経過と資生堂が実行しようとしている”真の女性活躍推進策”について、取材に基づきながらわかりやすくレポートしています。
 両立支援だけでは女性の活躍(キャリアアップ)は出来ない。そのために・・・

 ご一読を。

 

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